第18話城、ちょっとだけ崩壊

「おい!!入るぞ!!」



バン!とドアを蹴破られる。あーあ、とリオが呑気に声を漏らす。

大きな音だったせいでユウはびっくりしてベッドの上で、跳ねた。デイルを見て、えと声を出す。



「どちら様で?」

「あ?お前が聖女か?偽モンか?」

「(なんかめんどくさそ…)わかんないっぴー」



「デイル、チカちゃん寝てるから静かにしなきゃ」「うるせえ!」と一蹴したデイルは持っていた本を床に落として、ずかずかと大股でユウに近づく。

うーん、とチカが目を覚ます。その時、デイルはユウの胸倉を掴んだ。ふわりと浮く体にユウは怯むことなくデイルを見据える。



「アレンから聞いたぜ。お前らどっちかが、もしくは両方が聖女を騙ってるかもってやつ」

「…、それは私たちにも自分が聖女様かどうかなんて分からないから」

「そおーかよ」



そう言うとデイルはユウを下ろした。「お姉ちゃん!」と妹が姉に駆け寄る。心配した様子の妹だったが目が輝いている。そんな妹の表情を見た姉はこいつも攻略対象か…てかお姉ちゃんを心配しなさい、と心の中で突っ込んだ。



「アレンの言う通りだな。こいつら自身聖女なのかどうかすら分かってねえ」

「デイル、やり過ぎだよ。謝って」

「あ?こいつらが偽モンかもしれねえのに?聖女かどうかなんて今証明してもらえばいいじゃねえか」

「デイル」



アレンが静止するように呼んでもデイルはユウとチカに睨みをきかせる。

デイルは腰にかけたいた剣を抜くとそれはキラリと光った。一瞬、死が過ぎった姉だが、聖女様を証明しろという彼が自分を殺すわけがないと冷静に判断した瞬間、血が頬についた。ぽた、と頬に伝う感触に目を疑う。

デイルが自分の左腕を切ったのだ。



「!な、にを…」

「治せ」

「、は?」



そしてデイルは続けた。



「聖女ってのはな、自分の生命力と引き換えに傷を一瞬で治せんだよ。やれ」

「……」

「デイル、やめて。二人を怖がらせない約束だったでしょ」



アレンがデイルに近づくが、彼は退く気がない。ぴり、と冷やかな空気が流れる、主にアレンから。


まずいことになった…と姉は思考を張り巡らせていた。聖女様は治癒能力を持っているのを初めて知った。それを証明しろと言われても何の準備もしてない。だが不可能とも言えない、言えばここで殺されるだろう。


黙りこくってしまった姉妹にデイルは「そうか」と一人理解した。



「てめえら、偽モンだな。俺がここで殺してやる」



剣がこちらを向いたと同時にあ、とリオが声を漏らして瞬時にこちらに向かってきた。え、と反応する前に姉妹はリオに担がれてすぐに部屋に出された。



「え!何!?リオ!?」

「逃げるよ〜!あの二人戦ったら部屋壊れちゃうから」

「嫌や〜!攻略対象の戦い見たい〜!!」

「お前何言っとるんや!!」



ユウは何が起こっているのか分からず後ろを振り向けば、ゴッと大きな音を立てて部屋が吹き飛んだ。縄のようなものが宙を舞っている。よく見るとそれはオレンジ色の菱形が集まったもので自由自在に動いている。

何あれ!とギョッとする姉。



「何やあれ!ファンタジーなん!?ここ!」

「あれ、言っとらんかったっけ?」

「聞いとらんわ!!!」



これは後で妹に詳しく聞いた方がいいな、と姉はげんなりした。

廊下を走るリオはどんどん聖女様の部屋から離れていく。逃げ惑う従者達が被害の大きさを物語っていた。

その中でフィルに出会った。フィルは呆れた様子だが、揺れる城にビビっている。



「おい!リオ!またあいつら喧嘩してるのか!?」

「そうだよ〜、まあいつものようにデイルが悪いけどさ〜」

「全く…あいつの短気にも世話を焼いたものだな…後でルーファスとエディに怒られておけ。研究棟まで避難しよう。あそこまで行けば安全だろう」



リオは姉妹を下ろすと「疲れた〜」と全然疲れていないようだった。

ルーファスとエディという名前が出た瞬間、チカの目が輝き、ああ攻略対象の名前ね…と姉はもう慣れたものだった。



「あ、フィル」

「なんだ?」

「ありがとね」

「?何がだ?」



前回、牢屋にぶち込まれた姉妹の説得フォローしてくれたこと。しかし勿論記憶がないフィルは首を傾げた。

その反応にユウはちょっぴり寂しそうに眉を下げてにこっと微笑んだ。



「別にぃー?何となく」

「はあ?」

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