第5話 昼食、入浴、そして呼び出し

ひび割れた食堂の壁にかかったデジタル時計は、午前11時30分を示していた。


鉱山の深部で、まるで肉体的な拷問のような強制労働を延々と強いられた午前のセッション。それを終えた後の昼食時間は、この見捨てられた世界に神がいるとすれば、その慈悲深い神からの恩恵のように感じられた。


デボンは長い金属製のベンチに腰を下ろし、目を輝かせながらトレーの上の食事を見つめた。今朝の事件でまだ少しあざが残る顔とは対照的な表情だ。もし朝食の「セメント粥」と「レンガパン」が料理という概念への冒涜だったとすれば、この昼食は厨房からの公式な謝罪と言えるだろう。


本日のメニュー:『深海イカの触手シチュー ~激辛イカスミソース仕立て~』と『海藻ライス』。


「ついに……」


デボンは感極まって声を震わせながら呟いた。紫色の弾力のある触手の一切れをスプーンですくい上げる。香ばしい匂い。海特有の生臭さはあるが、鼻を刺すような香辛料の香りでうまく消されている。


彼はそれを口へと運んだ。


モグ、モグ。


デボンの頬を想像上の涙が伝った。食感はプリプリとしていて、タイヤのゴムのように硬くはない。味が染み込んでいる。塩気、旨味、そして辛味が舌の上で爆発し、今朝の灰色の粥という悪夢を洗い流していく。


「美味い」


今度は滅多に見せない心からの言葉が漏れた。


「これは本当に『食べ物』だ。この監獄も、まだ囚人を人間扱い……いや、モンスター扱いするだけの良心は残っていたらしい」


隣では、ゼラスが遥かに野蛮な方法で食事をしていた。スプーンなど使わない。彼は鋭い爪を巨大なイカの切り身に突き立て、牙で引き裂いて食べている。ひび割れた仮面のような口の周りは真っ黒なイカスミソースで汚れ、まるで食事の下手な捕食者の幼子のようだ。


「お前、もうちょっとゆっくり食えよ」


デボンは粗末な紙ナプキンで自分の口元を拭いながら注意した。


「俺たちはエリート囚人だぞ。野生動物じゃないんだ」


「グルルゥ……こりぇ、ウミャイ」


ゼラスは口いっぱいに頬張りながら答えた。目は嬉しそうに輝いている。研究所で味気ない栄養液ばかり与えられてきた実験体にとって、この監獄食はグルメそのものなのだろう。


だが、至福の時は短い。現実が無慈悲に襲い掛かる。


けたたましいサイレンの音が響いた。


12時00分。作業再開だ。


午後のセッションは、反復の地獄だった。


デボンは再びツルハシを握り、硬い岩壁を打ち叩き、煌めく『アジュール・クォーツ(碧水晶)』を採掘する。新しい筋肉が悲鳴を上げている。ツルハシを振るうたびに、肩と背中に痛みが走る。冷や汗と鉱山の塵が混ざり合い、青白い肌を汚く、脂ぎったものに変えていく。


それでも、デボンは耐えた。文句は言わない。彼はその痛みを燃料に変え、真っさらな身体の『マッスルメモリー』に、強くなる方法を叩き込んでいく。


午後4時30分。除染エリア(共同大浴場)。


白いタイル張りの巨大な空間に蒸気が充満している。数十個のシャワーから噴き出す水音が、心地よいホワイトノイズを作り出していた。


デボンは熱いシャワーの下に立ち、濡れたタイルの壁に片手をついて額を寄せていた。黒髪がぺったりと濡れて垂れ下がり、完璧な逆三角形(Vテーパー)を描く背中を伝って、肌の汚れを洗い流していく。


もちろん、彼は全裸だ。


頭の赤い翼は、雨に濡れたヒヨコのように力なく垂れ下がっている。デボンは長く息を吐き、熱い湯が筋肉の緊張をほぐしていくのを感じた。だが、このリラックスした時間を台無しにするものが一つだけある。


彼は首に触れた。冷たく重い金属の感触。『魔導工学(マギテック)の拘束首輪』だ。


「クソッ……」彼は小さく毒づいた。「こいつのせいで『回路』が締め付けられる。まるでストローで呼吸しようとしてる気分だ」


デボンは体を起こし、濡れた髪を後ろにかき上げた。蛇口の金属部分にぼんやりと映る自分の顔を見つめる。


一瞬、彼の中の『中二病』が顔を出した。彼は目を細め、冷酷で尊大な表情を作る。


「フン。今のうちに勝利の美酒に酔うがいい、愚かな看守どもよ」


彼はその反射像に向かって呟き、片手で顔半分を覆うドラマチックなポーズ(ダークフレイムマスター風)を決めた。


「この程度の鉄くずで、皇帝たる私を永遠に繋ぎ止められると思っているのか? 我はゾリンスラエル! 物語の支配者なり! 貴様らは我が壮大なる物語のNPCに過ぎん! いつの日か、指パッチン一つでこの場所を粉砕してや――」


彼は独白を締めくくるため、カッコよく体を回転させた。


ツルッ。


足が床に残っていた石鹸の欠片を踏んだ。


「ぐはっ!」


ドスンッ!


威厳もへったくれもない。皇帝の尊厳は消え失せた。デボンは漫画のように足を空中に投げ出し、背中と尻を硬い床に強打するという情けない音を響かせた。


「うぐぅ……」


デボンは腰を押さえながら顔をしかめた。濡れた床に大の字になり、湯気の充満した天井を見上げる。


「痛てぇ……クソ、濡れた床は皇帝の天敵かよ……」


肉体的な痛みより、羞恥心の方が勝っていた。彼は素早く左右を確認し、他の囚人(特にあの『ブルドッグ』や『サタン』)にこの失態を見られていないかチェックした。幸いにも、濃い湯気が彼を隠してくれていた。


「チッ。貧弱だな」


彼は自分自身を罵った。


デボンは寝返りを打ち、起き上がろうとした。だがその時、ふと馬鹿げた考えが頭をよぎった。彼は床を見つめた。


「せっかく下にいるんだ……筋トレだ」


彼は腕立て伏せの体勢をとった。


「一……」


体が持ち上がる。上腕三頭筋と大胸筋が収縮し、美しく、審美的に引き締まった肉体が浮かび上がる。


「二……」


まだ余裕だ。


「三……」


重く感じ始めた。


「五……」


腕が震え始める。


「七……」


呼吸が不自然に荒くなる。


「九……」


顔が真っ赤になり、首の血管が浮き出る。


「十……んぐぅ……ああっ!」


バタン。


デボンは力尽きた。濡れた床に崩れ落ち、まるで10キロのマラソンを完走したかのように激しく息を切らしている。たった10回の腕立て伏せで。たったの10回だ!


「情けねぇ……」彼は弱々しく床を叩いた。「この体は……詐欺だ。優良誤認もいいとこだ。見た目はアスリート、腹筋はシックスパック、肩幅も広い……なのにスタミナはゼロ。まるで高級スポーツカーに芝刈り機のエンジンを積んだようなもんだ」


彼は、全盛期の状態に戻るまでの道のりがいかに遠いかを痛感した。再生能力だけでは不十分だ。戦うための基礎体力がなければ意味がない。


ノクターヌス標準時 17:00。


場所:中央広場へ続く回廊。


清潔な(だが肌触りは粗い)オレンジ色のジャンプスーツに身を包んだデボンは、義務付けられたレクリエーション時間のために中央広場へと向かう数百人の囚人の流れに身を任せていた。彼はうつむき加減で、両手をズボンのポケットに突っ込み、モンスターや悪魔、ミュータントの群れに溶け込もうとしていた。


だが、頭に赤い翼が生えている状態で目立たないようにするのは、無駄な努力だった。


突如、黒い革手袋をした手が彼の胸を制止し、力強くも乱暴ではない動作でその歩みを止めた。


デボンは顔を上げた。ラベンダーと冷たいオゾンの混じった香水が鼻をかすめる。


そこに立っていたのは、アイラだった。エルフの看守は口の端を歪めて笑い、鋭い瞳でデボンを見下ろしている。その目には、面白がっているような、それでいて威圧的な色が混じっていた。


「そこで止まれ、トラブルメーカー」


アイラは言った。鈴のような声だが、危険な響きがある。


デボンはため息をつき、肩を落とした。


「今度は何ですか、看守殿? 俺はただ真っ直ぐ歩き、誰とも目を合わせず、規則正しく呼吸をしてただけだ。何も問題は起こしてない」


「あら、そう?」


アイラは細い眉を上げた。彼女は爪先で手元のデータタブレットを叩く。


「今朝の食堂(メス・ホール)からの報告:警備用サイボーグを巻き込んだ騒動。午後のD-4鉱区からの報告:器物損壊――トロッコ一台が大破し、囚人の『ブルドッグ』が一名、ICU送り。さて、この両方の事件に名前が出てくるのは誰かしら?」


「それは濡れ衣だ」デボンは真顔で即座に反論した。「食堂じゃ、俺は粥差別の被害者だった。それに鉱山? トロッコを投げてきたのはブルドッグの方だ。俺は被害者なんだよ、アイラ。いじめの被害者だ」


「その被害者とやらが、ブルドッグの精神を崩壊させて、目が覚めた時に泣いて命乞いをするようにさせたわけね」アイラはクスクスと笑った。「言い訳は結構。黙ってついて来なさい」


「どこへ? レクリエーション時間は始まったばかりだぞ」デボンは弱々しく抗議した。


「所長がお前と会いたがっている」


デボンに選択権はなかった。アイラは彼を囚人の列から引き抜いた。だが、地下の尋問ブロックへ連行する代わりに、彼女は網膜スキャナーが設置された厚い鋼鉄の扉へと彼を誘導した。


「上層管理セクターだ」


扉がシューッという音と共に開くと、アイラが言った。


二人はガラス張りの気送管式エレベーターへと足を踏み入れた。アイラが高レベル権限のアクセスカードをかざす。


「行き先:タワー最上階。『ジ・エイペックス(頂点)』」アイラが音声システムに命じた。


ヒュンッ!


エレベーターは耳がキーンとなるような速度で上昇した。デボンはガラス越しに監獄の各階層が過ぎ去っていくのを見た――独房ブロック、食堂エリア、慌ただしい鉄の橋――すべてが足下へと縮小していく。彼らは海抜を遥かに超え、空に挑むようにそびえ立つ塔の部分へと向かっている。


チン。


エレベーターの扉が開いた。デボンが外に出ると、そこには全く異なる空気が漂っていた。汗や錆の臭いは一切しない。空気は冷たく、無菌で、強い静電気とオゾンの臭いがした。床は黒曜石で作られており、彼らの姿を鏡のように反射するほど磨き上げられている。


「歩け」アイラがデボンの背中を軽く押した。


彼らは静寂に包まれた長い廊下を歩いた。廊下の左側には、「監視センター(CCTV)- 立入禁止」と書かれた黒いマジックミラーの巨大な二重扉があった。壁の向こうから、数千台のサーバーの唸り声と冷却ファンの音が聞こえてくる。


歩を進めるたび、デボンは強烈な「見られている」感覚を覚えた。


ウィーン……カチッ。


デボンは天井の隅に目をやった。眼球の形をした機械式CCTVカメラが軸を回転させ、レンズを赤く点滅させてデボンの顔に焦点を合わせている。


デボンがさらに三歩進む。


ウィーン……カチッ。


廊下に並ぶ次のカメラも回転し、軍隊のような正確さで彼の動きを追尾した。次から次へと、通路沿いのすべてのカメラレンズが一斉に動き、まるで太陽を追うひまわりのように――あるいは獲物を狙う捕食者のように――デボンを目で追った。


「俺も随分とファンが多いみたいだな」


デボンは呟き、カメラのレンズの一つを直視して軽くウインクを送った。レンズは反応してズームインした。


「セレナをからかうな」アイラが隣で囁いた。「彼女はモニター越しにお前の心拍数まで見ることができるんだぞ」


彼らは廊下の突き当たり、荒々しい波の彫刻が施された黒い金属製の巨大な二重扉の前に到着した。


アイラが足を止めた。彼女は振り返ってデボンと向き合い、体で扉へのアクセスを遮った。


「入る前に」アイラはデボンの目をじっと見つめて言った。「まず私に感謝の言葉を述べなさい」


デボンは眉をひそめた。「はあ? 何のために? サメの巣へ連れてきてくれたことにか?」


アイラは、少し歪んだ、秘密めいた笑みを浮かべた。彼女は一歩踏み出し、二人の個人的な距離(パーソナルスペース)を詰めた。


「お前の独房の件よ、馬鹿者」アイラは囁いた。「今朝の点検前に、床に飛び散った血の海と内臓の破片を掃除したのは誰だと思ってるの? もしそれがなければ、お前は『施設汚損』で独房入りだったのよ」


デボンは一瞬呆気にとられた。今朝、自分の死体が無惨に破壊されたことを思い出す。「まさか、あんたが自分で掃除したのか?」と疑わしげに尋ねた。


「えーっと……技術的には清掃ボットに命じて、衛生係を脅して口止めしただけだけど」アイラはどうでもよさそうに肩をすくめた。「だが詳細はどうでもいい。私の独断(イニシアチブ)だ。だから、早く礼を言いなさい」


デボンはこのエルフの女を見つめた。そこには傲慢さがあるが、同時に……どこか歪んだ気遣いのようなものも見えた。デボンはプライドを飲み込むべき時を心得ていた。


「ありがとう、アイラ」デボンは誠実に――少なくとも誠実に聞こえるように――言った。「おかげで助かったよ」


アイラの顔に満足げな笑みが広がった。突然、彼女は手を伸ばし、デボンの頭、ちょうど二つの赤い翼の間をポンポンと撫でた。その仕草は、飼い主がペットの犬を褒めるような見下したものでありながら、奇妙な優しさを含んでいた。


「いい子だ」


アイラは呟いた。


彼女は手を引っ込めると、アクセスパネルを押した。油圧式のシューッという音と共に、二重扉がゆっくりと開く。


「よし。さっさと入れ。彼を待たせるな」


アイラは一緒に入らなかった。彼女はデボン一人を暗いオフィスの中へと歩ませ、背後の扉は自動的にしっかりとロックされた。


ガチャン。


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すべてをゼロから始めたとき @cosmic_01

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