第3話 初めての試練
「山頂を目指してみるか。」
京王線高尾山口駅を降りると、駅前は多くの登山客で溢れている。
見渡すと若い人もそれなりにはいるが、高齢の男女の割合の方が高かった。
本当はとろろ蕎麦だけ食べて帰るつもりだったが、
昼食の時間より早めに着いてしまったのもあり山頂まで行ってみることにした。
「高齢者の方々も登れるような山だし大丈夫だろう。」
登る負荷を減らすため、麓から出発するケーブルカーに乗った。
ケーブルカーの窓からは緑色に生い茂った木々が見えた。
普段は会社と家の往復ばかりでこんな風に自然をじっくり見るのはいつ以来だろうか。優雅な自然の旅を10分程度堪能していると展望台がある山上駅に着いた。ここは高尾山の中腹あたりだろうか。
ここから山頂までは1時間もあれば着くらしい。
道も舗装されているし、そこまで大変ではないだろう。
しかし歩き始めると登り坂のキツさに気づく。
社会人になってからはデスクワークメインだったこともあり、体力の衰えを感じる。
汗も止まらない。仕方なくお守り代わりにいつも鞄に入れているアニメキャラが刺繍されたタオルで汗を拭う。(エミリアたんごめん、、、)
30分以上歩いてようやく中間地点となる薬王院に到着した。
呼吸も乱れており足も悲鳴を上げている。ここで少し休憩をしよう。
一息ついていると、どこかからか醤油の焦げた香ばしい匂いが漂ってきた。
そこにはなんと団子の屋台があった。
運動をして少し小腹も減っていたので、醤油団子を一本食べることにした。
もちもちとした食感と、甘辛い醤油だれがマッチしてなんと美味しいことか。
そば屋に行く以外はコンビニ弁当ばかり食べていたため、こうした手作り感のある食べ物は久しぶりだったので、胃の中が幸福感に包まれた。
食べ終わった後、折角なので御本堂で参拝し、「異世界転生しても無事に過ごせますように。」と願った。すると一瞬、空気が張りつめたような感覚があった。
そして『異世界転生したいのか?』と誰かに尋ねられたような気がしたが、
おそらく疲れのせいであろう。俺は正気を戻すために頭を振った。
参拝を終えて山頂まで向かおうと思ったが、体力が既に枯渇している。
休んで団子まで食べたんだからという気持ちと、無茶は良くないという気持ちの葛藤があった。しかしながら、異世界で生き抜くためにも撤退できる勇気は必要だと自分に言い聞かせて、来た道を戻り、ケーブルカーで麓まで降りた。
麓にはとろろ蕎麦を提供する店が並んでいる。早速食べたようと思ったが、まずは駅前にある温泉で汗を流してから、すっきりした状態で食べたいと思った。
登山後の温泉のなんと気持ち良いことか。
こうして、初の高尾山旅行はとろろ蕎麦だけでなく、団子や温泉なども満喫する楽しい旅となった。
いや、違う。
体力の限界を知ることが出来たことと、初めての地に順応することが出来たということで、有意義な鍛錬の旅となった。
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