第13話 一難(悪魔)が去ってまた一難(魔法少女)、ぶっちゃけありえない

「!?!?!?」


 種の中から聞こえてきた声に、俺だけでなくアモンも驚く。

 目を見開いて種を見つめる俺たちへと、謎の相手はこう言葉を続けた。


「この程度の魔人で勝てるとは思ってなかったけど、苦戦もせずに圧勝か……想像以上の戦闘力だ」


「何者だ、お前? 俺たちを見てやがるのか?」


「ああ、そうだよ。えっと、丸子くんだっけ? 彼は君たちの強さを計るための噛ませ犬として送り出させてもらった捨て駒さ。予想通り死んだわけだけど、おかげでいいデータが取れたよ」


『……相棒、こいつは悪魔だ。それも上位のな』


 そんな予感はしていた。丸子や他の悪魔に命令できるだけの権力を持つ、上位の存在というやつなのだろう。

 つまりは特別犯罪者たちも好き勝手に動いているわけではなく、誰かの命令に従って動く奴もいると……そう考える俺へと、謎の声は言った。


「もう少し君たちと話していたいところだけど、残念ながらそんな余裕はなさそうだね」


「待て! 逃げんじゃ――ぐあっ!?」


 通信を終えようとした声に対し食い下がる俺であったが、背中に衝撃と痛みが走った。

 よろめいた後、驚きつつ振り返った俺は、そこに立つ人影を目にしてはっと息を飲む。


「追いついたわよ、魔人!」


「攫った人たちを返しなさい!!」


「おいおい、冗談だろ……!?」


 赤と緑の衣装に身を包んだ、光を纏う二人組の少女。

 俺を睨みつけた彼女たちは、堂々とした名乗りを披露する。


「司るは勇気の炎! ブライトフレア!」


「司るは自由の風! ブライトウインド!」


「「心を乱す悪魔の闇は、私たちが祓ってみせる!」」


 テレビの魔法少女よろしくポーズを決めながらの名乗りに、俺は硬直するしかなかった。

 のは俺の方かと、謎の声の意味深な言葉の意味を理解した俺は舌打ちを鳴らすと共に、状況を確認する。


 この二人の正体は妹の風花とその友人の火蓮……丸子のように倒すわけにもいかない。

 かといって魔人の俺の言うことを聞いてくれるとは思えないし……と考えつつも、俺は淡い期待を込めて二人と話をしてみることにした。


「おい、ちょっと待ってくれ。俺はお前たちと戦うつもりは――うおっ!?」


 冷静に話をしようと持ち掛けたところで、すさまじい勢いで飛び込んできたブライトフレアがパンチを繰り出してきた。

 ギリギリでそれを受け止めた俺へと、敵意を剥き出しの表情で彼女は言う。


「あんたに戦うつもりがなくってもね、こっちにはあるのよ。子供たちから母親を連れ去っておいて、見逃してもらえると思ってるの?」


「だから待てって! 誘拐犯は俺じゃねえ! その魔人は俺が倒した! 母親も無事だ!」


「えっ……? ほ、本当だ……!」


 攻撃を受け止めながら気絶している母親たちを指差せば、風花……じゃなくて、ブライトウインドが目を丸くして驚きながら呟きを漏らした。

 続いてこちらを見たウインドは、警戒しつつも相棒へと言う。


「フレア、確かにこの魔人は商店街で見た魔人とは別物だよ! 背中にヒレも生えてないし!」


「そうみたいね。でも、だからといって魔人を見逃す理由にはならないでしょっ!!」


「おっと、やっぱそうなるよな……!」


 どうにかなるとは思っていなかったが、やはり予想通りの展開になった。

 俺が魔人である以上、誘拐犯かそうでないかなんて関係ない。ブライトにとっては、俺は倒すべき敵でしかないのだ。


「じゃあ、やるしかねえか……!」


「っっ……!」


 ゴウッ! と全身から炎を噴き出しながら呟いた俺へと、ブライトたちが距離を取りながら警戒の視線を向けてくる。

 完全に戦闘の構えを取る彼女たちを見つめ、にやりと笑った俺は……そのまま握り締めた悪魔の種を砕きながら地面を殴ると同時に、黒煙を噴射してみせた。


「なっ!?」


「し、視界が……っ!」


「悪いな、逃げるが勝ちってことで退散させてもらうぜ!」


「ちょっとあんた! 待ちなさいっ!」


 ブライトにとって俺は敵だが、俺にとってあの二人は大切な妹とその友達だ。傷付けることなんてできるわけがない。

 であるならば、取る手段は一つ……三十六計逃げるに如かずってやつだ。


 文字通り、魔法少女たちを煙に巻いた俺は一目散に地下駐車場から飛び出し、二人が追って来ないことを確かめてから変身を解く。

 そうした後、急いで子供たちがいる商店街へと走っていくのであった。

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