第10話 壊される日常、第二の特別犯罪者現る
「は? あんた、何言って……っ!?」
俺の言葉に半ば呆れた様子を見せた火蓮も、アスファルトから突き出た背びれを見て即座に表情を変えた。
その背びれが仲良く手を繋いで歩く親子連れへと向かう様を目にした俺は、駆け出すと共に大声で叫ぶ。
「危ないっ!」
「えっ?」
俺の叫びに反応した親子が振り向いたのと、地面から灰色の巨大な鮫のような魔人が飛び出したのはほぼ同時だった。
状況を理解できないでいた親子の内、母親を大きな口の中に納めた鮫は再び地面に潜り、猛スピードで逃走を始める。
「おい、大丈夫か!?」
「ママ……? ママ! ママ~ッ!!」
残された子供に声をかけた俺は、彼女に怪我がないことにまず安堵した。
しかし、目の前で母親を連れ去られた少女は、突然の事態に激しいショックを受けた様子で母親を呼びながら泣きじゃくる。
『あの子が言ってた母親が消えたってのはこういうことか!』
「アモン、あいつを追えるか!?」
『任せろ! あんだけ悪魔の力を使ってるなら、気配を追うなんて楽勝だぜ!』
ここであの魔人を逃がすわけにはいかない。そう判断した俺が追跡は可能かと聞けば、アモンは自信満々にそう答えてみせた。
「悪い! この子たちを頼む!」
「えっ!? 大神さん、どうするつもり――!?」
背後から聞こえる風花の声を無視し、俺は全力で魔人の後を追う。
契約の力で体力も走力も強化されているおかげで苦も無く全力疾走を続けられている俺へと、魔人の気配を伝えるアモンが言ってきた。
『相棒、多分あいつは――!』
「ああ、俺と同じ特別犯罪者だ」
犯行の現場と狙った人間から犯人に心当たりがあった俺は、アモンと同じ結論に達していた。
異世界転移からわずか二日……この短期間で特別犯罪者が動き出したことに驚くアモンであったが、しっかりと俺をナビゲートしてくれている。
『ここだ! この中で悪魔の気配が消えた!』
そうやってアモンが連れてきたのは、人気のない地下駐車場だった。
ここに逃げ込んだ魔人を警戒しつつ、俺は慎重に中の様子を窺いながら歩みを進めていく。
『なあ、相棒はもしかして、あの魔人の正体に心当たりがあるのか?』
「ああ。だから急いでるんだ。あの母親たちはまだ殺されてない。今なら助け出せるはずだ」
あの魔人は二人の母親を食べた。しかし、あれは捕食したのではない、口の中に格納しただけだ。
子供と一緒にいる母親を連れ去るその手口に心当たりがあった俺は、あの魔人を見失わなければ被害者を救出できると確信していた。
(……近いな)
直感に従って不快で不穏な気配へと近付いていった俺は、地下駐車場に潜む人物の姿を捉えた。
壁に連れ去った母親たちの背を預けるように座らせながら、怯える彼女たちに思い切り顔を近付けるその男は、狂気に満ちた声で言う。
「ママ、ママ……! 僕を抱き締めてよ、ママ……!!」
母親を求める子供のような、無垢な言葉。
しかし、それを発しているのは太り、脂ぎった中年男性だ。
「前の世界ではいなかったんだよ、僕のママになってくれる人が……でも、こっちの世界にならきっといるはずなんだ。僕は見つけるんだ、僕のママを!」
(やっぱり、あいつは……!)
前の世界、という発言からあの男が特別犯罪者であることを確信した俺は、同時に自分の予想が正しかったことも確信する。
あの姿、発言、犯行内容……その全てが俺の中にあるとある犯罪者の記憶と一致していた。
「
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