こたつの新聞
祖父はプレゼンをやめる気は全くなく、次に私に見せたのはメモではなく写真でした。
新聞の切り抜きの写真です。
先ほどからの祖父の行動は正直なところ意味不明で、私は杏仁豆腐のことしか考えていませんでした。
そんな私の様子にも祖父は気に留めず、なんとも自慢げな表情でこう言いました。
「俳句とかをね、さっき書いたのを応募すると時々載せてもらえるんだ。」
私の頭で三回ほど木魚が叩かれました。ポク、ポク、ポクと。
あまりに予想外で、無の境地になりました。
始めからそう言ってくれないだろうかと思いましたが、改めて見ると祖父の作品は確かにクオリティが高く、面白みがありました。
別に私は詩人のプロでもないのですが、ユーモアがあると思いました。
前回の「最期まで...」のように。
少しばかり前におじさん構文と言われるものが流行りましたが、おそらくその存在を祖父は知らないでしょう。
なのにあの語尾を選ぶセンスがあるのです。素晴らしいと思いませんか。
馬鹿にしてるって?
いやいや、そんなことはありません。
すみません、話題が逸れましたね。話を戻しましょう。
祖父が言っていた通り、彼の詩や俳句は時々新聞に載せられていました。
帰省したときにそっと、こたつの上にその載せられた新聞の一面が置かれていたこともありました。
私は祖父が読み終わったまま置きっぱなしにしているのかと思って、読まずにしまっていました。そして、しまった後にいきなり「俳句読んだ?」だなんて聞かれて困惑するということが多々ありましたね。すまんとでも言っておきます。
それくらいに祖父は不器用だと思います。
私の主観ですが、祖母と祖父はギクシャクしているように感じます。
例えば、お昼ご飯の前にこんなことがありました。
「新聞置かんといて!」
と、健気にアピールした証拠品に対して怒る祖母。
祖母は聞こえるように大きな声で話すのですが。
「何言っとるか分からんわ。全く。」
と、祖父が投げやりになっていたりします。
祖母は知っているのでしょうか。
無口な彼の心の声は面白いものだということを。
そして、意外と祖父は温かさを秘めた人間だということを。
朧げですが、こんなものがありました。
「夫婦円満の秘訣は忍耐と思いやり だが墓は別々か 最後まで元気に生きたいネ」
また出たか
祖父の構文
語尾に癖
やまなし、素人の俳句。(テン!)
……にしてもこの作品、俳句ではないですよね。
何なんでしょうか。
祖父の正体はポエットだった やまなし @mozukaku_107
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