第2話 初めてのダンジョンと配信
「ふふふ・・・・・・」
私はとあるカードを見てにこにことしていた。認定証。このカードを持っていればダンジョンに潜って魔物たちと戦闘することが出来る・・・・・・そうつまりは!
「やったあ! ダンジョンハンターになれたぞー!!」
そう! これで私も晴れてダンジョンハンターの一員! つまり夢への一歩を踏み出せたということなんだ!
「いやあ、良かった・・・・・・」
ダンジョンハンターになるには、まずそれ専門の学校に通って戦闘訓練をしなくちゃならない。そこでの模擬試験に合格したら、次は本番の試験というわけなんだ。
「まあでも、そこまで大変じゃなかったかな」
戦闘訓練自体は学校でも多少は受けてる。世界がこんな状態になったから、何かあった時のためにダンジョンハンター志望じゃない人でもある程度の戦闘訓練を受けることが義務付けられているんだ。だから、そこまで大変じゃなかったし、私は魔法少女に変身できるわけだしね。そこまで苦労はしなかったわけだよ!
まあ、慣れないこともあってうっかり学校の訓練場を壊しそうになってドン引きされたこともあったけど・・・・・・それは置いといて。
「早速やってきました! ダンジョン!」
私は今、ダンジョン内部に立っていた。ダンジョンの第一階層、ここに出てくる魔物は弱い。初心者はまずここで慣らしてから、奥へ奥へと進んでいく。
この第一階層はレンガ造りの壁、石畳の床と天井で出来た通路のようなものがずーっと続いていると言う場所だ。入り口に立つととそこかしこに低級の魔物がうろついているのが見える。奥の方は真っ白になっていて見えない。あの奥の方に、第一階層のボスがいて、それを倒すと第二階層へ通じる階段が現れるらしい。学校でそう習った。
「おー、いるいる! うろついてるねー!」
魔物を見るのは初めてじゃないし、たいして怖くない。私の心は麗しのチハヤお姉様への愛で燃え上がってるしね! 恐怖なんて入り込む余地はないんだよ!
「というわけで! 早速初めてのダンジョン戦闘と配信を始めるぞー!!」
私は魔法少女ステッキを突き上げてそう叫んだ。私はもうすでに変身している。変身すれば認識阻害魔法を使えるから、身バレ対策にね。チハヤお姉様も顔や本名は隠してるしね・・・・・・いつか信用されてそれも教えてもらえるような関係になりたいな・・・・・・。
さて、準備は万端。
私は空中に浮かんでいるカメラの電源をつけ、配信を開始した。
「えーっと・・・・・・もう配信できてるかな?」
私がカメラを見ながらそう呟くと、カメラの近くに浮かんでいるモニターに映っているコメント欄がそこそこの速度で流れた。
『お、きた』
『きた!』
『新人の初配信と聞いてきました』
「はーい、新人ダンジョンハンターの、えーっと・・・・・・魔法少女スター・レインと申します。これからよろしくねー」
私はカメラに向かって手を振った。
『かわいい』
『かわいい』
『かわいいな・・・・・・』
「かわいい? ありがとねー」
『その衣装かわいいね』
「あ、この衣装? 確かに、かわいいよねー」
今の私はザ・魔法少女って感じの某プリキュア風衣装に身を包んでいた。配信を見ている人たちもお気に召したらしい。
『魔法少女なんだ?』
「そうですよー。魔法少女だから、不思議な力も使えます! ビームだって撃てちゃいますからねー」
『ビーム撃てるのか・・・・・・』
『気になるな。見てみたい』
「いやいや、ビームのことなんて別にどうでもいいんですよ!」
私はカメラに向けてずいっと顔を近づけて叫んだ。
『顔ちか』
『ガチ恋距離だ!』
『やめてチョロいから好きになっちゃう・・・・・・』
「私には夢がある!!」
『夢・・・・・・何?』
「私には夢がある!! だからダンジョンハンターになったの!!」
『夢かあ』
『やっぱりS級ハンターになるとか?』
『登録者百万人とか・・・・・・』
「そんなものに興味ないから! S級も百万人もどうだっていい!!」
『ええ・・・・・・』
『そんなこと言うダンジョンハンター初めて見たぞ』
『史上初じゃない?』
「私の夢はただひとーつ!! それは憧れのダンジョンハンター、夢野チハヤお姉様とお近づきになること!!」
『ええ・・・・・・』
『それ公言するのか・・・・・・』
「夢は言葉にしたほうが叶いやすいっていうからね!! あ、でもチハヤお姉様に私のことを伝えるのはやめてね。迷惑になるだろうから」
『うん、そうだね』
『それは大事』
「あっ、でもチハヤお姉様に関する情報はじゃんじゃん私に教えてくれていいからね! チハヤお姉様に関することなら私への鳩大歓迎だよ!」
『ええ・・・・・・?』
『そんなことあるんだ・・・・・・』
『面白いな。チャンネル登録したよ』
「私へのチャンネル登録はいい! それより早くチハヤお姉様のチャンネル登録をしてきて!」
『それはもうしてあるよ』
「ならばよし!」
『なんだこの子・・・・・・』
『俺は応援するぞ。何か尊いものが見れるような気がする』
と、まあ視聴者にも私がどんな人間か大体わかってもらえたところで、いよいよダンジョン戦闘を開始する!
私が偉大なる一歩を踏み出した時、ふと右側に横道が空いていることに気がついた。ダンジョンの壁の途中が四角くくり抜かれていて、そこから奥へ道が続いていそうな気配がするのだ。
「おや? なんでこんなところに道が・・・・・・」
『ほんとだ。こんなところに道がある』
『怪しいな・・・・・・』
「怪しげな横道・・・・・・なんだかお宝の気配がするね! 入ってみよう!」
『入るな入るな!』
『罠だったらどうするんだ・・・・・・』
「あっそうか! やば、罠かもしれない・・・・・・どうしよう・・・・・・」
『遅いよ・・・・・・』
罠かもしれないと思ったけど、幸いなことに罠ではなかった。
ただ、お宝はなかった。そこには棍棒を持ったゴブリンが一匹立っていた。その奥は行き止まりになっている。
「・・・・・・なんでこんなところにゴブリンが一匹だけ・・・・・・」
『さあ・・・・・・』
『待機部屋とか?』
「待機部屋かあ、だとしたら休憩中とかだったのかな。ならちょっと悪いことしたかもね・・・・・・まあいっか! とりあえず倒そう!」
そう言って、私はぺこっと頭を下げてゴブリンに挨拶した。
「えっと・・・・・・こんにちはー、初めまして」
『???』
『・・・・・・何してんの?』
「あっ、いや、戦う時は一応本当に魔物かどうか、実は人間だったりしないか確認してから戦いなさいって学校でなったんで・・・・・・」
『えっと・・・・・・魔物判定機とかを使えって意味だと思うんですけど・・・・・・』
「あ、そっか」
いけないいけない。そんなもの渡されてたっけ。すっかり忘れてた。
「うん、よし。魔物だ」
それでは気を取り直して・・・・・・
「それじゃダンジョンハンターになってから初の魔物討伐だし! 景気付けにド派手なビームで一発やっちゃうよー!!」
『ビーム!?』
『あ、早速撃ってくれるんだ』
『ゴブリンにビームって明らかに過剰な気もするけど・・・・・・』
「まあまあいいのいいの! ゴブリンといえども油断禁物! ここはかけらも残らないくらいに消し飛ばしちゃおうねー」
『こわ・・・・・・』
『いや怖』
「それじゃあいくよ・・・・・・」
私は魔法少女ステッキを構える。私はそこのステッキの先端部分に魔法少女の不思議マジカルパワーを集めていく。ステッキの先に光の球が出来始めた。
『なんかヤバい、なんかヤバいな・・・・・・』
『え? これほんとに大丈夫なの?』
『画面越しでもヤバそうな気配を感じる・・・・・・』
『やっぱりゴブリンに使う技じゃないよこれ!』
コメント欄がなんか怖がってる。対面するゴブリンも最初は怪訝な表情をしてたけど、今はめちゃくちゃに怖がっている。
いやいや、そんなに怖いものじゃないって。魔法少女の夢と希望に満ちたマジカルなビームなんだからさ。
「・・・・・・よし準備完了! いくよ、必殺魔法! 『マジカルスタービーム』!!」
私の叫びとともに、全てを破壊し尽くすマジカルな星のビームがゴブリンを跡形もなく完全に蒸発させ、その奥にあるダンジョンの壁に大穴を空けるのだった。
・・・・・・
「あっ、やばい! ダンジョンの壁に穴空いてる! どうしよう大丈夫かな・・・・・・」
『あれ、ダンジョンの壁ってそんな簡単に壊れるものだったっけ・・・・・・』
『いや、確かBとかC級の魔物とかでもそう簡単には壊せないって聞いたんだけど・・・・・・』
『これはまたすごいヤツが現れたね』
今日の実績、ゴブリン一匹。ダンジョンの壁破壊。
ダンジョンが出現したので魔法少女になって配信する─憧れの人とお近づきになりたい─ 大崎 狂花 @tmtk012
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