第三夜 退屈な箱

それから私は裕福すぎるほどの生活に放り込まれた。

石の壁で埋め尽くされた大きな箱の中で。

一際大きな玄関を過ぎるとまずは風呂場に連れて行かれた。

磨き上げられただ一つの輝きを放つ面白みのない通路を歩かされ、湯の張られた大きな浴場に着いた。

「いずれは民の前に立つのだ。念入りに洗っておけ、土汚れのひとつも残すな。」

義父はそういうと白黒の服を着た女達に合図をした。彼女らは四人体制で色とりどりな道具を使い、私の体を流し始めた。

爪の先から耳の中に至るまで、ただ念入りに洗われた。私は身動きすら取れなかった。

体が水気を忘れた頃には、目に悪い、金銀の豪華装飾のされた布の塊を着させられた。

「いいか息子よ、気品を忘れるな。この私の息子として。」

あとは任せる。そう彼は言うと私の頭を一度撫で、その場を去った。

女達は一度も言葉を交わさずに私の手を引き、

縦に長い机の置かれた大きな部屋に連れて行った。

この部屋も、家具と装飾以外何の面白みのない、ただ退屈さを感じるものだった。

そんなことを考えている間に、彼女らは手早く大量の料理を運んできた。

その部屋に似合わない鮮やかさを放つ野菜や果物、

同じ肉でも多種多様な調理をされたものが一種類につき二つずつ並べられた。

扉の開く音がした、ひどく重いのか金属の擦れるような、軋むような音が重なって、

思わず私は目を細めた。

「さあ息子よ、食事だ。」

義父が向かいの席に座ると、

最後に血のような色をした液体がグラスに注がれた。

先ほどまでは退屈で溢れていた部屋に、一気に色彩が増えた。

「遠慮はするな。食え、食って力にしろ。」

彼はそう言うと、両脇の道具を器用に美しく使い、皿を開けて行った。

使い方も作法も知らない。ただ彼の真似をするように私も手をつけた。

父はそんな私の姿をただ見つめ、静かに笑った。

「良い、これから覚えれば良い、時間はいくらでもある。」

彼は眼前の料理を片付けると、その場を立ち私のそばへ寄った。

「明日から覚えることが増えるぞ、存分に励むといい。」

彼はそう言うとまた、私の頭を一度撫で、部屋を出て行った。

目の前にはまだ大量に料理が残っていた。

食って力にしろーー。

彼の言葉を思い出し、私は満腹のまま食べ続けた。


ーーーーーーーーーー

あとがき


第三話更新です。

みなさんは本当に限界まで食事をしたことはありますか。

私は喉の付け根に異物感を感じるまでならあると言えます。

大体食事をするときはみんなお腹を空かせているものですよね。

でも与えられ過ぎると返って苦しくなってしまう。

これは食事に限らずとも言えることです。

皆さんは、求めていたはずなのに与えられた瞬間、いらなくなってしまった。

そう聞いて思い出すような経験、ありますか。


これからもどんどん上げていくので、もしよろしければ、

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これからもよろしくお願いいたします。




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