第ニ夜 拒絶の視線
馬に乗せられ巨大な石の壁を抜けると、賑やかな町に連れられた。
人が多い。
故郷では考えられないほどの数だ。
道は人に埋め尽くされ、どこまで続いているのかわからない。
色とりどりの野菜を並べ、滅多に食べられなかった肉が惜しげもなく吊るされた出店。
活気と匂いに、私は気圧された。
「王の帰還だ。」
「王よ、今回もまた領地を広げられましたか。」
「我が王に栄光あれ。」
彼を認めた瞬間、視線は一斉に集まり、歓声が上がった。
世界が違う。
私はそう感じた、その時だった。
「王よ、そのものは何者です。」
誰かが放ったその一言で、全員の目線が変わった。
空気がひどく重くなったのを、私は本能で感じ取った。
視線が、私に集まる。称賛ではない。疑念と、不信と、拒絶。
凄まじい恐怖を私は感じとった。
刃を向けられるよりも、この視線の方が恐ろしかった。
それは殺される恐怖ではない、否定され、捨てられる恐怖。
この男を切り付けたときのように、体が逃げろと命じていた。
逃げ出したかった。
この場所に自分の居場所などないということを、私は理解した。
目を隠し、顔を俯けた私の頭に、彼は自らの兜を押し付けた。
「怯えるな。胸を張れ。お前は私の息子なのだ。」
それは低く、優しい声だった。彼はそう耳打ちすると、声色を変え民衆に語りかけた。
「案ずるな。この者も、後に続く者も皆、城門をくぐったからには例外なく同士なのだ。
ましてやこの者は私が直々に連れてきた者、疑いの目を向けるでない。」
民衆は沈黙した。馬の歩みは止まらない。
「そうだ、我らも元は貧しかったのだ。思い出せ、誰のおかげで今の生活があるか。」
「ああ、そうだ。王の判断を信じよう。」
「ここにいる者は皆、同士だ。」
声が重なり、手が掲げられる。人々の目は、再び王だけを見ていた。
出会って間もないが、この義父と名乗る男を唯一、
私の心は頼っていた。私は味わったことのない小さな安心感を抱いていた。
私を前に乗せたまま、彼は正面を指差した。
「あそこが今日からお前の家だ。」
指の先には山と見間違うほどの大きな建物が聳え立っていた。
ーーーーーーーーーー
あとがき
ただ生まれた場所がちがうだけでも、集団は拒絶の視線を向けてしまう。
皆さんもそんな経験ありませんか。例えるなら、新しい土地での周囲の視線や、学校や勤務を休んだ次の日のみんなの視線のような…。
あの感覚、何なんでしょうね。共感して頂けた方はこのエピソード、少し没入しやすかったのではないでしょうか。
これからもどんどん上げていくので、もしよろしければ、
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これからもよろしくお願いいたします。
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