灰を辿る亡霊ーー優しさが国を焼くまでの物語ーー

SeptArc

第一夜 獣を拾う王

義父は、寛大な方だった。

血統と力だけが物を言うこの世界で、

ただ一人、優しさを武器に国を治めていた王だ。

「不要な血を流す必要はありません。

言葉で解決し、共に手を取り合いましょう」

彼はそう語り、実際に言葉で国を広げた。

剣を抜かず、首を刎ねず、それでいて逆らう者を残さない。

その国は、いつしか武力においても比類なきものとなり、

大陸で五本の指に入る大国へと成り上がった。


——そして、私の故郷もまた、呑み込まれた。


村に騎士団が来たとき、誰も抵抗しなかった。

痩せ細った大人たちは地面に視線を落とし、

子どもたちは母の影に隠れ、泣き声を殺していた。

私は、その輪の外にいた。

理由はわからない。ただ、本能が告げていたのだ。

——危険だ、と。

過剰なほどの騎士を引き連れ、

その先頭に立つ男。

豪奢な鎧に身を包みながら、剣を抜く気配すらない。

私は農作業用の手鎌を握り、前に出た。

獣のように、唸った。

「少年、この村の者か」

声は静かだった。

だが、その奥に底知れぬ何かを感じ、

私は歯を剥き、飛びかかった。

金属音が鳴り、血が舞った。手甲の隙間。狙ったつもりはない。

ただ、そこに刃が吸い込まれただけだった。

馬が嘶き、騎兵たちがどよめく。

だが男は、血の滴る手を上げ、場を制した。

「……ほう」

怒りはなかった。むしろ、愉快そうですらあった。

男は馬を降り、再び私に手を差し出した。

「甲の間を切るか。気に入った」

理解できなかった。

言葉の意味も、この男の意図も。ただ、その目が——恐ろしいほどに、優しかった。

「その力、人を守るために使う気はないか」

沈みゆく夕陽の中、

私は唸るのをやめ、その手を取った。

その瞬間、私の人生は焼かれることを約束された。

「今日からお前は、私の息子だ」


ーーーーーーーーーーーー

あとがき

本編完成前に溢れ出た創作意欲を満たすため、

書くか書かないか迷っていたストーリーを書きました。

登場人物全員が主人公であり、生まれながらの悪役などいないーー。

本編では語られなかった鎧を着た人物のバックボーンをぜひお楽しみください。


これからもどんどん上げていくので、もしよろしければ、

フォローといいね、称賛していただけると励みになります。

これからもよろしくお願いいたします。



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