第2話 まじで蓮がきやがった。

あくる朝。


俺は、起きるとすぐに親友の蓮(レン)にメッセージを飛ばした。


『家出しちゃった。』

『は?』

『家を出た。』


『今どこよ?』

『借りたアパート。』

『それどこよ?』

『南千里のオレンジマンションってアパート』


『いくわ』

『今から?』


そこから返信がつかなくなった。


しばらくベッドで寝っ転がって、おなかが減ったなと思い

昨日の夜から何も食べていないことに気づいて、

とりあえず服だけ着替えて近くのコンビニ行くことにした。



「いらっしゃいませ!」

自動ドアをくぐると妖精が挨拶してきた。

正確には、妖精型アンドロイドであるが、今は妖精と言っておこう。

扉の上の木のオブジェクトから、パタパタと美しい半透明の水色の羽をはためかせて降りてくる。

「ようこそ!21マートへ!」

そう言うと、光のオブジェクトを撒き散らしながら、パタパタとどこかに飛んで行った。



「食い物食い物……と」


コンビニ内には、ドワーフやホビットなんかが働いている。もちろん正確には……だが。みなまで言わせるな。

なかには、昔ながらのコンビニの制服を着た、人間のバイトもいる。


俺はというと、ジーンズの上に黒のパーカー、黒のキャップというどこにでもいる格好だ。



俺は適当にペペロンチーノとタマゴサンド。レモンサイダーをカートに入れ、カウンターのエルフのおねぇさんまで持っていった。


「ありがとうございます。992ポイントになります」


流石エルフ。一瞬で暗算。

俺はマイナカードを清算機にかざして会計をすませた。


「ありがとうございますー!」


俺が退店すると、後ろから声が聞こえた。



言っておくが、他のところもエルフやドワーフだらけということはない。

あくまで、「21マート」のコンセプトがあれなだけだ。


他のコンビニは猫型だったり犬型だったり。もっと武骨なロボットロボットしたところもある。


帰り道、閑静な住宅街を歩いていると、ちょっとした公園があった。

ちょっとした遊具と、小さなガゼポがあって、今は他に誰もいない。



ガゼポに据え付けられた椅子に腰かけ、買い物袋からパスタを取り出す。


公園の外の坂の下に、さっきのコンビニが見える。


俺が、パスタをパクついていると、コンビニの方から


「ゴブリンだ!」


という、悲鳴とも怒声とも取れない声が聞こえた。


俺は、慌ててパスタを買い物袋にしまい。声の方向を凝視した。


数人のサラリーマン風の男達が、なにやら緑色の小型モンスターに追いかけられている。


21マートだからゴブリンが出たわけではない。



宇宙時代が始まり。人類は何種類かの地球外生命体と接触した。

その一種に、「モンスター」「デーモン」等呼ばれる種族がいて

その中の下等種。通称「ゴブリン」は、たびたび人間の街に現れるようになった。



ズパンッ。という音がして、ゴブリンの腰から上と腰から下が、別れて飛んだ。

それをした主はそのまま、青白く光りを纏う刀を鞘に納めた。


運よく、通りがかりに、ロボット化人間がいたらしい。


彼らは、ぱっと見には普通の人間と何ら変わりはない。法律的にもただの人間だ。


彼らは、体や脳を機械化する道を選んだ人間。ロボット強化された人間である。


彼は、刀を帯刀し、鎧らしき物を装備している。

鎧と言っても、昔の金属製の甲冑ではない。軍事的な目的で開発された、軽くて強い素材で作られたスーツアーマーである。


身なりからして、ハンターなのだろう。


遠巻きに、サラリーマン達がハンターにお礼をしているのを見ながら、俺は家路についた。


買い物袋のパスタは少しはみ出してしまっている。慌てたのでしょうがない。


俺は、腰に吊るしているナイフを確かめながら、

閑静な住宅街、きれいに舗装されたアスファルトの道を5分ほど歩いて、

新しく自宅となった「オレンジマンション」の前で、


「なんだと?!」


と素っ頓狂な声を上げた。


「やぁ。ツトム」

「蓮!」


目の前にいたのは、俺の幼稚園時代からの親友、川本蓮。

俺もポイントランクは高いほうだが、こいつのポイントランクは最上位に近い。

だから、こんなこともできる。


「これからはいつも一緒だね。僕は嬉しいよ」

「おま。だからって……」


オレンジマンションの隣の空間。隣の一戸建ての屋根の上に、

見慣れた連の家。黒くて四角い、浮遊型キャンピングルームがあったのである。


こいつ。家ごと引っ越してきやがった。

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