第3話 「にゃあ」

「こちらが弟さんかにゃあ?」



姉は猫を顔の前に抱き上げて言った。

玄関に入って家に上がる前で見せられたのだ。

俺は困惑した。



「知り合いに保護猫がいるから貰ってきたの」



「……」



「どうしたの?」



「会わせたかったのって、これ?」



「そう、なに彼氏を連れてくると思ったの? いやー、照れるなあ」



「あ、そう。じゃ」



「いや、ちょ! 冷たいよ。これから家族になる子に失礼でしょ」



俺は奥に引っ込んだ。

猫は苦手なんだよ。

リビングに逃げる。



「弟よ、吾輩に対して失礼だにゃあ」



追いかけてきた姉が、面白がって猫を顔の前に向けて言った。

それに対して俺は言った。



「姉ちゃんが世話するの?」



「そうだよ」



「ちゃんと出来るの?」



「出来るよお」



姉はふくれっ面を見せていた。

すると、猫が姉から離れて俺の足元に来た。

顔を向けてくる。


じっ……。


そのまん丸い目が怖い。

俺がビビっていると猫は、「フッ……」という鼻で笑うような仕草をした。

そして離れていった。


こいつ、馬鹿にしやがって。



「ほらー、嫌われた」



姉が呆れていた。



「俺はこいつを家族とは思えない」



俺は猫を睨みつけた。



「そんなことを言わないの。大事にしてよ」



姉のそばに戻った猫は甘えている様子だった。ごろごろと言っている。

俺はそれが気に食わなかった。離れろよ。


姉が俺のふくれっ面にイラっとしたのか、

「そんなことしてると、居場所がなくなるよ?」と言った。


はぁ? 


この日から俺の腹の虫が騒ぎ出した。

猫に姉を奪われるという不安だ。

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