第2話 「俺たちの日常」

「KO!」



コントローラーが俺の手から落ちた。

そして、ケンカが始まる。



「姉ちゃん! 少しは手加減してよ」



「なに言ってんの。ストレス溜まってるんだからこれぐらい良いでしょ?」



「ひど! 扱いひど過ぎ」



「教師という仕事は大変なのよ。分かってよ」



「それ、生徒である俺に言う? 同じ高校に通ってるんだよ、俺たち」



「だから何? 姉弟ってことを感じさせないように気を付けてる私の身にもなってよ」



「そのセリフ、そのまま返すわ」



「……」




あれから10年がたっていた。

俺たち姉弟は互いに支え合い、そして困ったことがあったら助け合うようにしてきた。そのはず……だった。


だが、今。


料理が出来ない姉に代わって、台所に立つ俺。

掃除が出来ない姉に代わって、掃除機をかける俺。

金銭管理が出来ない姉に代わって、家計簿をつける俺。


全部、俺がやってる。

ちょっとは手伝え!


まあ、そんな日々を過ごしてここまできた。



「姉ちゃんさ」



俺は、部屋を出ていこうとする姉に言った。



「なに? 彼女できた?」



「ちげーよ」



「じゃあ何?」



「……」



それは、

このまま俺たちが、ずっと一緒にいられるのか……と心配していることだ。


でも、

言えない。


いつかきっと、姉はパートナーとなる人を見つけて俺から去っていくんだ。



「いや……。なんか毎日が退屈だなって思っただけ」



「……」



「それだけ、だよ」



「ふーん」



なんか、視線が怖い。

こんな真剣な表情する姉は久しぶりだ。


この後、姉は部屋を出て言った。

俺が余計なことを言ったからか、しばらく自分の部屋に籠ってしまったようだった。

もしかして、怒ってんのかな。


そう思ったが、晩御飯の時も顔を見せて、普通だった。


でも、何か考え事をしているような顔をしている。

すると、目が合った。


「ねえ……。今度の休みに会わせたいのがいるの。良い?」



飄々とした顔で言われた。


俺はご飯を喉に詰まらせそうになって、咳き込んだ。

心の準備が出来ていないのに、これかよ。



しかし、俺の不安はこんな程度で済まなかった。

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