第7話 柴崎慧の暴走
「ねえ、ねえ、ねえ。」
美結の周りを着いて回るのは柴崎。
朝の登校中、休み時間、放課後だけではなく、授業中にも何かとちょっかいをかけてくる。
「ねえ、ねえ、ねえ。」
「何?いい加減しつこいよ。」
余りのしつこさに文句は言うが、全く意に介さない様子だ。
「別に構わないさ。」
「はあ?」
「君にどう思われても構わないって言ってるんだよ。」
「どういうこと?」
「別に知らなくていいことだよ。」
「じゃあ、私に構わないでよ。」
「それはできないな。」
「まったく何なの?」
疑問を口にし、走って美結は駆けていく。
「僕が本当に愛してるのは君じゃないから。」
柴崎は美結の背中が見えなくなるまで見続けていた。
ある放課後。
「ちょっと面貸しな。」
小川が柴崎を呼び出す。その顔はやや赤く、そっぽを向いている。柴崎は静かに頷き、小川の後を追う。
普段使われない空き教室に男女が二人。やや埃被ったそこには特異な空気漂っていた。
「ねえ、柴崎君は美結のこと好きなの?」
「全然。」
「えっ?」
莉緒なりに話の構成を立てて呼び出したにも関わらず、出鼻を挫かれた。
「じゃあ、何で?何で?」
「『何で髙山美結に告白をしたのか?』もしくは『何で髙山美結の近くにいるのか?』って聞きたいの?」
小川は勢いよく首を縦に振る。柴崎はまるで小川がそこにいないかのように、ただ真実を語るように感情のない声で告げる。
「俺は髙山美結が好きだった。あの独特な雰囲気や考え方が好きだったんだ。他の人とは違う。髙山美結のことを知ったら、俺も変われるかもしれない。そう思ったら、髙山美結のことで夢中になった。だから告白して、そして振られた。」
「じゃあ、どうして?」
「はあー。」
柴崎は深いため息を漏らす。
「全く、小川さんは『どうして』、『なぜ』ばっかりだね。少しは現実を見るべきだ。」
「現実…?」
「気づいていないのかい?髙山美結は変わった。いや、別れたと言ったほうが正しいか。」
「何?」
「もしかしたら、君が髙山美結をいじめてくれたお陰かもしれない。そのことにだけは感謝してもいい。君は最高に屑だ。」
「何を言って…。」
「今の髙山美結は髙山美結であって髙山美結でない。これが分からない内は何を言っても分からないよ。」
柴崎の異常さに小川はべったりとした粘度の高い汗をかく。小川には柴崎のことが最早同じ生物だと思えなくなっていた。この場から逃げ出したい衝動に駆られる。
「キャー。」
振り返った所に机があり、躓いてしまう。
「おや、大丈夫かい?」
柴崎が手を伸ばそうとする。小川も少しほっとした顔で手を取ろうとするが、その前に柴崎が手を引っ込める。
「そうだった。俺は、彼女以外に触れられたくないんだった。」
そう言い残すと、柴崎は教室を後にした。
「あのー、この辺で何か変わったことありませんでしたか?」
警察が近所で聞き込みをしている。
「何か最近警察多いな?」
「そうだね。何かあったのかな?」
「別に何もないさ。」
挙動不審に言う柴崎に対し結美が軽口を言う。
「先生も言ってたからね『最近物騒な事件があった』って。噂では成人女性の骨が見つかったとか。それに誰のものか分からないらしい。」
「へー。」
結美の目が鋭く光る。
「まあ、大丈夫さ。」
「そうか、何もなければ良いのだが…。気を付けてね。」
何もなく家に帰ろうとすると、自宅のドアをノックする人物がいる。
「あのー。」
「ああー、君はここの子か?」
「ええ、そうですけど。」
「私たちこういうものですけど。」
見せられたのは警察手帳。噂の警察が家にまでやってきたのだ。
結美はこの場面に適切な人物に委ねることにした。
「えっ?どうした…んですか?あなた達は?」
「えーと、このあたりを巡回しているのですが、最近、特に変わったことはありませんか?」
美結に対応を任せたのだ。
「んー、変わったこと…。」
手を顎のあたりに当て、考え込む。「あー、んー。」と唸ると、
「特になければ大丈夫ですよ。」
とやんわり断ってきた。元々、中学生に重要なことが聞けるとは思っていなかったのだろう。
「では、失礼します。」
お辞儀をして帰ろうとする警察に対して、
「ちょっと待ってください。実は…。」
呼び止め、あることを告げる。
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