1-5 依頼探し

 軽快な音楽が流れ、暖かい雰囲気の店内。客達が楽しそうに会話をしながら食事してる中、明らかにズーンという沈んだ暗い音がしていそうな一角があった。

 窓辺の四人がけの席に座りこの世の終わりみたいな顔をして、元から青白かった顔をより青白くさせている少女はぶつぶつと何かをひたすら言いながらすっかり幽霊のようになっている。

 その向かい側の席に座るのは、少女と真反対のようなオーラを纏う青年。ニコニコと微笑み、机の上に置かれている皿の中のオムライスを美味しそうに食べている。

 「食べないのかい?冷めてしまうよ?」

 そう言われてもアウローラはずっと死んだ魚のような目で虚空を見つめている。そしてその目をルーカスに向けたかと思うと、わなわなと震え出し、言葉を絞り出した。

 「る、るる、る、ルーカス、さん……」

 「うん、」

 「ど、どうしましょう……命の危機、が訪れて、しまいました……」

 「命の危機って?」

 呑気にオムライスを食べているルーカスと対照的にアウローラは震えを抑えるようにしながらオムライスの頂点を一心に見ている。

 「…私は、バーノック王国で、とある人にお世話になってるん、です……その人に……ちょっとしたお使いを、頼まれまして……そ、それであの森で、木の実を集めていたんです……」

 スプーンをかちゃりと皿に置き、ふむふむと聞いていたルーカスは考えた。

 「てことは、その人のところに帰ってないということになるね」

 「そ、それ、それなんですっ!!じ、ジェンキンスさんはっ、怒ると、とってもとっても、怖いんですっ!!」

 もはや涙目のアウローラはしおしおと小さい身体をより小さくさせ、項垂れた。

 「うぅ……絶対、帰ったらお仕置きですぅ……」

 苦笑しながらルーカスは提案する。

 「なら、僕と一緒にその人のところに行こう」

 「る、ルーカスさん、と…?」

 パチリと目を瞬かせたアウローラは一気にへなへなと気の抜けた表情になる。

 「そ、それならぁ、安心かも、です」

 「よし、じゃあ冒険者協会から一つ依頼をもらってから行こうか」

 「はい!!」

 元気に返事をしたアウローラは今、怖いもの知らずの無敵ムードに駆られていた。

 そしてパクパクと手付かずのオムライスを完食した。

 帰ったら恐ろしい制裁が待ってることも知らずに______




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 店を出て、二人はもう一度冒険者協会に戻った。そして受付に行く。

 「新しい依頼が欲しいんだけど、何か今届いてるものはあるかい?」

 受付の女性はしゃがみ、引き出しから何通かの依頼便を取ると机に広げた。

 アウローラがそれらを見るが経験に乏しいアウローラにはどれがどのくらい難しいのかわからない。

 受付の女性は一枚を手に取る。

 「これは最近、オーエン山脈の中腹部に巣を作っている地竜の討伐案件ですね。山脈を通る商人の方々からの依頼です。」

 それを聞いていたルーカスはうーんと考え、首を振る。

 「まだ僕らには若干早いかな」

 「そ、そうなんですか……」

 女性は次々と手に取り、案件を紹介する。砂漠に出るサンドサーペントの駆除、汚染された地域の浄化、希少鉱石の発見助力などなど。

 だがどれもかなり危険だったりとても時間のかかるものばかり。

 ルーカスがどれにしようか、せめてもう少し簡単なのは……と悩んでいた時だった。


 「あ、あの……これ、ならいけそう、です………」


 アウローラが口を開いた。アウローラがそっと指差した手紙を取ってみると、それは



『バーノック王国東部に位置するアシーミ湖にてウォータードラゴンが出現。怪我人少数確認。討伐依頼』



というものだった。

 ルーカスはウォータードラゴンも十分危ないのでは?と思ったが理由はわからないけれどもあの臆病でなかなか自分の意思を口にしないアウローラが珍しく自分から提案し、いけそう、と言うのだから信じてみることにした。

 それにちょうどいい。バーノック王国での依頼だから、アウローラの住んでいるところに行く方角から外れていない。

 「よし、じゃあ引き受けようか」

 「!!…いいんですか?」

 少し心配そうなアウローラの頭をルーカスは優しく撫でた。アウローラは少しくすぐったそうな、恥ずかしそうな顔で目を伏せ、杖をギュッと握りしめた。

 受付の女性が頭を下げる。

 「ありがとうございます、お二方。それでは、行ってらっしゃいませ。無事をお祈りしています」


 





こうしてアウローラとルーカスの最初の依頼が始まった。






 

 


 

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