第13話B型作業所リスタートへ
2022年10月20日。わたしは二年間を過ごした松戸に別れを告げ、東京都江戸川区にある新しいグループホームへと居を移しました。
松戸での日々は、八万円の労働と、ワタさんやサエちゃん、アリサといった仲間たちとの濃密な交流に彩られていました。けれど、わたしの人生の時計は、再び次のフェーズへと進むことを求めていたのです。
引っ越しを終えたわたしは、まず失業保険の申請を行い、次なる職を求めて動き始めました。そんな折、新しいグループホームの管理者であるタダさんから、ひとつの提案がありました。
「根岸さん。実はわたしの知人が、千葉県の市川市でB型就労支援事業所を経営しておりましてね。もしよろしければ、失業保険を受給しながら、そこへ通ってみるのはどうでしょう? 先方もぜひ、と言ってくれているのですが」
その事業所の名は「リスタートいちかわ」。
「リスタート」――再始動。その響きは、過去の「バッドハビッツ」を振り切り、新たな自分を構築しようとしていた当時のわたしの胸に、静かに、けれど力強く響きました。
2022年12月1日。わたしは市川の地に降り立ち、リスタートいちかわの門を叩きました。
松戸の食品工場とはまた違う、どこか新しく、未知のエネルギーに満ちた場所。そこには、わたしの「人間好き」という本能を再び激しく揺さぶる出会いが待っていました。
職員として働いていたのは、ハルカちゃん。まだ十七歳という、眩いばかりの若さを湛えた美少女でした。その透明感のある存在感は、殺伐とした日常に一筋の清涼な風を吹き込んでくれるようでした。
そして利用者の中には、エリカさんという女性がいました。彼女はかつて女優やモデルとして活動していたという経歴の持ち主で、その立ち居振る舞いには、表舞台で光を浴びてきた者だけが持つ独特のオーラが漂っていました。
「ここでもまた、新しい物語が始まる」
わたしは確信しました。江戸川の住まいと、市川の作業所。この二つの拠点を往復しながら、わたしは再び「実存」を懸けた大冒険へと身を投じていくことになる。
失業保険というささやかな猶予期間の中で、わたしは牙を研いでいました。十七歳のハルカちゃん、そして元女優のエリカさん。彼女たちとの出会いが、わたしの内側にある「表現したい」「愛されたい」という渇望に、新たな火を灯そうとしていたのです。
松戸で培った経験を糧に、わたしは「リスタート」の看板の下で、またしても自分自身の限界を試すための、美しくも危険なダンスを踊り始めようとしていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます