第9話 案外、森の外が合ってた
うつ病になる前の自分も、
その森の中にいた。
疑いもせず、当たり前のように。
でも、動けなくなって、
森の奥へ進めなくなったとき、
自分は脱落したのだと思っていた。
しばらくは、
森の入口を振り返りながら生きていた。
「あそこに戻れたら」と。
けれど時間が経って、
少しずつ分かってきたことがある。
もしかしたら、
自分は最初から森向きじゃなかったのかもしれない。
競争に意味を見出すより、
立ち止まって考えるほうが性に合っていた。
成果を積み上げるより、
感覚や違和感を大事にしてきた。
森の外での暮らしは、
不便だし、派手さもない。
古民家みたいで、
雨漏りもあるし、寒い日もある。
それでも、
呼吸の速さを誰かに合わせなくていい。
宝石の数で、自分の価値を測られない。
今は、
この場所のほうが、
本来の自分に合っている気がしている。
だから最近は、
うつ病になったことを、
完全な不幸だとは思えなくなった。
もちろん、つらかった。
今も簡単ではない。
でも、偶然起きた事故のようには感じていない。
むしろ、
なるべくしてなった、
必然だったのかもしれないと思っている。
無理を続けていたら、
もっと違う形で壊れていた可能性もある。
早めに止まれたことに、
意味があったのかもしれない。
人生は、思い通りにはならない。
でも、なんだかんだで、
なるように、なっていく。
森の外で、
静かに暮らしている今の自分を見て、
そう思えるようになった。
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