第5話 昔は幸せを追い求めていた
健常者だったころの自分は、
いつも幸せを追いかけていた。
もっと楽しいこと。
もっと刺激のある体験。
もっと充実している自分。
ヒップホップ、グラフィティ、スケボー、ライブ、海外。
動き続けていれば、
どこかに「本物の幸せ」がある気がしていた。
今は違う。
うつ病になって、
脳が思うように働かなくなってから、
幸せを追うこと自体が、できなくなった。
その代わり、基準が変わった。
今日は生きている。
今日は大きな事故もなく終わった。
それだけで、もう十分だと思える日が増えた。
以前の自分なら、
こんな状態を「停滞」や「失敗」と呼んでいたと思う。
でも今は、そうは感じない。
生きていれば満足できる、という感覚は、
諦めではない。
失った末に、たどり着いた場所だ。
幸せを追わなくなったことで、
皮肉にも、心は少し静かになった。
うつ病の人が見えている世界では、
人生は上に積み上げていくものではなく、
今日を崩さずに置いておくものに近い。
それは派手ではない。
でも、確かにここにある。
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