第4話 力のない僕

 放課後、教室の掃除。


 康太は机を持ち上げようとしていた。


「……よっ」


 持ち上がらない。


 何とか持ち上げるが腕が震え、机が少し浮いて、すぐ落ちる。


 その瞬間。


「え」


「今の見た?」


 教室が一瞬静まる。


「……コータ、それ一人用だよね?」


「……すみません……」


 康太は耳まで赤くなるが、マイが机をひょいと持ち上げる。


「これ?」


 軽く移動してサラも別の机を運ぶ。


「特別重くもないよね」


 リナが康太の腕を軽く掴む。


「……細い」


「ちょ、やめて……」


 女子たちが顔を見合わせる。


「想像以上に力ないね」


「本当に文化系だ」


 康太は小さくうなずくしかなかった。


「じゃあ康太は軽いのだけでいいよ」


「無理に持たせると危ない」


「転んだら大変だし」


 いつの間にか役割が決まる。




「……手伝ってはいます……」


「うんうん、偉い」


 頭を撫でられる。


(慰められてる……)




 掃除後、康太が鞄を持ち上げると、「重そう」とマイが言う。


「教科書入れすぎ」


「だ、大丈夫です!」


 と言った直後、腕がプルっとする。


「はいストップ」


 サラが鞄を奪う。


「無理しない」


「じゃあ康太はこれ」


 リナが渡したのは、自分の小さなサブバッグ。


「軽いでしょ」


「……はい……」


 完全に役割逆転。




 途中で別の女子が声をかける。


「康太くん、持とうか?」


 マイが即答。


「もう持ってる」


「足元見て」


 サラが言う。


「段差ある」


 リナが肩に手を置く。


「ゆっくり歩いて」


 康太は包囲されながら進む。


(僕、要介護……?)




「……あの、そこまでしなくても……」


 マイが真顔。


「力ない自覚ある?」


「……あります……」


「じゃあ却下」


 サラが続ける。


「怪我したら困る」


 リナが締める。


「可愛いから」


「理由がおかしい……」




「ついでにコータも運ぶよ」


 そのままリナさんに持ち上げられる。


 廊下を通ると、同じ学年の女子たちがちらちら見てくる。


「え……小脇抱えられてる……」


「康太くんまたギャルに連行されてる……」


「かわいそ……でもかわいい……」


 クスクス笑いが広がる。


 康太は顔を覆いたかったが、両手は空中に浮いたまま。どうにもできない。


「見ないでくださーーい!!」


 声だけがむなしく廊下に響いた。


 ギャル三人はというと


「今日のコータ、まじ可愛いポイント高いわ〜」


「ね、むしろ運ぶ方が楽じゃん」


「明日もこうする?」


 などと勝手に盛り上がっている。


 康太はただ小さく震えながら、ギャルたちの“荷物ついで運搬”にされていった。




 家の前。


「じゃあまた明日」


「ちゃんとご飯食べてね」


「腕鍛えたいなら言って」


 康太は小さく手を振る。


 家に入って、鏡を見る。


「……鍛えよう……」


 翌日。筋肉痛でさらに力が入らず、世話が倍増することになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

デカいギャルに囲まれる日常 UMA未確認党 @uma-mikakunin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画