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 わたしの家のトイレと洗面所の壁はうさぎ柄だ。

 ネットで壁紙を買って自分で張り替えた。自分の家なんだから好きな柄にしてもいいだろうと、冒険する気持ちで北欧風のベージュ地にうさぎの柄を選んだ。だからトイレと洗面所には無数のうさぎがいる。

 家には至るところにうさぎのモチーフが存在する。置物もうさぎ、枕カバーもうさぎ、鏡もうさぎ……しまいには表札もうさぎのシルエットが刻印されたものを注文した。

 うさぎと生きているのか、うさぎに生かされているのか、たまに分からなくなる。

 うさぎはか弱い動物だ。少しでも寒いと牧草を食べなくなり、牧草を食べられなくなると消化器官が動かなくなり、体調を崩してしまう。わたしが住む家は冬には雪の多い寒冷地だ。エアコンは寒冷地仕様の割高のものを選ぶしかなかった。

 そのエアコンがまあ凄い。実家で使っていたエアコンなんて暖房はすぐ霜取りで止まってしまい、室温が15℃いけばいい方だったのに、今では外が氷点下になろうが20土をキープしてくれる。寒冷地エアコンがないとうさぎは飼育していけないと思った。

 実家から引っ越した当初、うさぎたちは新しい部屋にビクビクしていた。へっぴり腰で鼻をふんふんときかせながら歩き回り、目を開けたままの寝顔しか見せなかった(うさぎは周囲を警戒しながら寝るので、目を開けたまま寝るのだ)。

 それが今では横たわってまぶたを閉じて寝ている姿を見せるようになった。わたしが住んで2年目にしてこの家に愛着がわいているのと同じく、うさぎたちも家を気に入ってくれたようで、寝顔を見る度に多幸感がわき上がってくる。

 うさぎたちの幸せがわたしの幸せ。田舎とはいえペット可の賃貸は家賃が意外と高く、実を言うとうちのローンよりも高かったりする。気兼ねなくうさぎと暮らしていくなら賃貸より持ち家。わたしの決断は金銭面でも間違いではなかった。

 わたしがセクシャルマイノリティだということは以前書いたが、うさぎとだったら結婚したいと本気で思っている。産まれてくる子供もうさぎだったら出産だってしたいと思える。なぜわたしは人間に産まれたのか、不思議になるくらいうさぎを愛している。

 来世はうさぎに産まれ、うさぎと結ばれ、うさぎの子宝に恵まれたい。

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