2

 庭付き4LDK一戸建てに住む独身女。世間的にはかなり少数派の稀有な人間だと思う。

 そう自覚しているから、職場では人事に転居届を出したきり、同僚たちには話していない。みんなわたしはまだ実家暮らしをしていると思っているはずだ。

 友人にも全員には言っていない。一人暮らしをしているとだけ伝えている人もいるから、恐らく賃貸だろうと思われているはずだ。

 近所の人にも母と暮らすと言ってあるので、まさか一人暮らしだとは思っていないはずだ。

 だからわたしの生活状況を正しく知っている人はごく限られている。家族や親しい友人数人くらいだ。

 自分自身、一軒家に一人暮らしをしている事実を改めて思い出すと「気味悪っ」と思ってしまう。しかもなぜこんなド田舎で。高校の友人のほとんどが都会で暮らす中、ひとりだけ田舎を極めすぎている。

 田舎暮らしは楽しい。近所の人は意外とドライで関わりはそれほどないし、春はそこかしこに花が咲いているし、夏は家庭菜園で夏野菜がとり放題だし、秋は都会よりは長く感じられると思うし。

 問題は冬だけなのだ。しかも、冬季性鬱を持っているせいでさらに冬は生きにくい季節になる。

 廊下は冷蔵庫並の2〜3℃まで下がるし、車は毎日霜だらけになるし、郡山市内では随一の降雪地帯ときては、冬が憂鬱になるのも仕方ない。

 母には物件の契約前から「雪が多いからやめろ」と言われていた。わたしは冬なんてたった数ヶ月なんだから平気でしょ、と思い忠告を聞かなかった。

 その結果、冬だけは少し後悔するけど、それを上回るくらいこの家には満足している。

 わたしはうさぎを2匹飼っており、実家では自分の部屋兼うさぎの部屋として飼育していた。自分のものは端に置いて、うさぎのスペースがメインだった。

 自分の家を買えばうさぎ専用の部屋を作れる。これも家を購入する上で大きな理由となった。

 うさぎたちには家の中でいちばん日当たりの良い南向きの部屋を、自身の寝室は北側の屋根裏部屋みたいな天井の部屋を選んだ。うさぎに人生を捧げる者として当然の選択だ。

 うさぎたちには夜はケージで過ごしてもらい、朝には部屋に放して自由に遊ばせている。冷暖房完備で、最近では加湿器も導入して湿度まで管理している。たぶん、うさぎの中でもかなり上流階級といえる生活を提供できているはずだ。

 うさぎたちのためにも、家を買ったのは正解だった。安心しきった顔で眠っているところを見る度にそう思える。

 うさぎたちのためにこれ以上高い買い物をすることはもうないだろう。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る