第6話 二番が前に、三番が後ろに

二番が前に、三番が後ろに


それは、

何度も繰り返された夜の中で、

自然に形になった。


教えられたわけじゃない。

決めたわけでもない。


ただ、

そうなるのが一番、楽だった。



ある夜、

他校の集団と鉢合わせた。


人数は、向こうが多い。

空気は、張りつめている。


仲間の一人が、

小さく息を呑んだ。


その瞬間、

悠矢が一歩前に出る。


何も言わない。

ただ、立つ。



視線が、

一斉に集まる。


それでいい。


怒りも、挑発も、

全部引き受ける。



その背後で、

愁也が動く。


仲間を散らす。

位置を変える。


逃げ道を確保する。


声は出さない。

拳も、まだ使わない。



相手の一人が、

前に出てくる。


言葉が荒れる。

空気が熱くなる。


悠矢は、

殴らない。


殴れる距離まで、

 引きつける。



愁也が、

低く言った。


「今じゃない」


悠矢は、

一歩引いた。


それだけで、

場の温度が下がる。



その瞬間、

相手は気づく。


囲めない。

逃げられない。


詰んでいる。



愁也が、

前に出る。


「今日は、

 やめよう」


その一言で、

終わった。



帰り道、

仲間の一人が言う。


「二番が出ると、

 安心するな」


「三番が静かだと、

 今日は勝ちだ」



悠矢は、

それを聞いて笑った。


愁也は、

何も言わなかった。



その夜から、

言葉が生まれた。


二番が前に、

三番が後ろに。


合言葉でも、

自慢でもない。


ただの事実。



悠矢は、

前に出ることで、

迷わなくなった。


愁也がいる。

それだけでいい。



愁也は、

後ろを見ることで、

恐怖を管理した。


悠矢がいる。

だから、決断できる。



我捨楽は、

強さの話をされるようになった。


だが、

本当の強さは、

この配置にあった。



二番が前に、

三番が後ろに。


それは、

信頼の並び順だった。

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