第5話 我捨楽の結成
我捨楽の結成
相棒になると決めたからといって、
世界が急に変わるわけじゃない。
変わったのは、
集まり方だった。
⸻
最初に声をかけてきたのは、
二年の先輩だった。
「最近、
お前ら一緒にいるよな」
悠矢が前に出る。
愁也は、半歩後ろ。
それがもう、
癖になっていた。
⸻
「面倒ごと、
まとめてくれねぇか」
その一言で、
だいたい察しはついた。
学校の中にも、
外にも、
小さな衝突が増えていた。
誰かが前に立たなければ、
無駄に広がる。
⸻
「条件がある」
愁也が言う。
先輩は、
少し驚いた顔をした。
「殴るのは最後」
「話ができるなら、先にやる」
「仲間を勝手に増やさない」
静かだが、
一つも引かない。
⸻
先輩は、
少し笑って言った。
「面白ぇな」
「じゃあ、
やってみるか」
⸻
集まったのは、
癖のある連中ばかりだった。
腕っ節に自信がある者。
居場所を失った者。
理由は違っても、
共通点があった。
一人じゃ、
どうにもならなくなっていた。
⸻
名前は、
後から付いた。
放課後の教室。
誰かが冗談半分で言った。
「俺ら、
ガシャガシャしてんな」
「捨て身でさ」
⸻
「我捨楽」
誰かが書いた文字を、
愁也がじっと見る。
「字、
面白いな」
⸻
「意味は?」
悠矢が聞く。
愁也は、
少し考えてから言った。
「今は、
なくていい」
⸻
それで決まった。
深い意味も、
立派な理念もない。
ただ、
呼びやすかった。
⸻
その日から、
我捨楽は動き始める。
悠矢は、
自然と前に立つようになった。
怒りを引き受け、
視線を集める。
二番隊長と呼ばれるのは、
いつの間にかだった。
⸻
愁也は、
後ろで全体を見る。
人数。
時間。
逃げ道。
必要な時だけ、
前に出る。
三番隊長。
本人は、
一度も名乗ったことはない。
⸻
我捨楽は、
強かった。
だがそれ以上に、
崩れなかった。
無茶をする者がいれば、
止める。
危ない夜があれば、
避ける。
⸻
悠矢は、
後になって気づく。
楽だったのは、
殴れるからじゃない。
考えなくてよかったからだ。
⸻
我捨楽、結成。
この時、
まだ誰も知らない。
この名前が、
いつか意味を持つことを。
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