第7話 コートの中と、コートの外

コートの中と、コートの外


悠矢高校生になって、中学同様に

バスケ部に入った。


理由は単純だった。


走るのが好きで、

跳ぶのが好きで、

点を取る瞬間が、

何より気持ちよかった。



最初から目立った。


身体能力。

度胸。

勝負所で逃げない性格。


監督は、

すぐに使い始めた。



「エース候補だな」


その言葉に、

悠矢は笑った。


喧嘩と同じだ。


前に出る。

引かない。

背中は見せない。



コートの上では、

迷いがなかった。


パスをもらう。

切り込む。

跳ぶ。


歓声が上がる。



一方で、

愁也はバスケ部に入らなかった。


誘われなかったわけじゃない。

実力がなかったわけでもない。



「入らないの?」


悠矢が聞いた時、

愁也は少しだけ困った顔をした。


「時間がな」



放課後。

愁也は、

駅前にいた。


隣には、

彼女がいる。



笑って、

並んで歩く。


手を繋ぐわけでもない。

派手なこともしない。


でも、

愁也はそこにいた。



試合の日。


悠矢は、

汗だくでコートに立つ。


残り数秒。

同点。


ボールが回ってくる。



迷わず、

打つ。


ブザー。

歓声。



その瞬間、

ふと客席を見る。


愁也はいない。



代わりに、

夜にメッセージが来る。


勝ったな

おめでとう


短い。


でも、

それで十分だった。



悠矢は思う。


自分は、

コートで生きている。



愁也は、

別の場所で生きている。



それでも、

夜になれば合流する。


我捨楽の時間。



「エース様じゃん」


誰かが言うと、

愁也は笑って言う。


「前に出るの、

 好きだよな」



悠矢は、

少し照れて答える。


「後ろにいるやつが、

 信用できるからな」



コートの中と、

コートの外。


選んだ道は、

正反対だった。



でも、

立ち位置は同じだった。



前に立つ悠矢。

後ろを守る愁也。



バスケでも、

喧嘩でも、

人生でも。



未来の彼女は、

この章を読んで思う。


「二人は、

 同じ場所を見てたんだ」


違う道を選んでも。

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