第13話 討ち死にしました。

装甲車が武田本陣へ突き進む。


轟音。

鉄履帯が地を削り、

潰された武田兵の悲鳴が後方へ流れていく。


銃声。

火炎放射器の咆哮。

クロスボウの矢が、雨のように降り注ぐ。


血が、宙を舞った。


誰かの叫びが途中で途切れ、

旗持ちが倒れ、

名のある武将が、馬上から崩れ落ちる。


一日で三十九名。


名乗る暇もなく、

武功を語る暇もなく、

ただ赤黒い地面へ沈んでいく。


本陣中央。


風林火山の旗が、血煙の中で揺れている。


その下に、ただ一人、動かぬ男。


武田信玄。


椅子に腰掛け、

戦場を見渡しながら、

微かに口元を歪めていた。


「……ほう。

 ここまで、武田に血を流させるたぁな」


甲州訛りが、低く響く。


僕は装甲車を止め、降りた。


「我こそは中田玄白なり!」


その瞬間、

信玄は鉄の軍配を掲げる。


「見事だに。

 だがよ……」


軍配が振り下ろされる。


「人は城、人は石垣、人は掘。情けは味方、仇は敵なり。」


その言葉を合図に、

最後まで残っていた近習たちが突進してきた。


武田の軍将が本陣で討ち死にしていく戦場の中、

逃走もせずこちらに向かってくる武田信玄。

彼は本物だ!


銃声。

矢が刺さり、

刃が交わり、

血しぶきが何度も跳ね上がる。


地面はぬかるみ、

足を取られた者から倒れていく。


その横で

山本勘助が倒れた。


くノ一の刃が閃き、

勘助は声を発することなく崩れ落ちる。


血が、信玄の肩へ、軍配へ、

静かに降りかかった。


一瞬。


信玄は、目を伏せた。


「……勘助か。

 最後まで、ようやったに」


怒号も、嘆きもない。


ただ

覚悟だけがあった。


信玄は立ち上がる。


「来い。

 まだ終わっちゃあおらん」


三方向から包囲。

槍が迫り、刃が閃く。


だが信玄は、

軍配で叩き落とし、

なお一歩、前へ出る。


銃声が響き、

身体が揺れる。


それでも倒れない。


「……これが、

 わしの、戦(いくさ)よ」


膝をつき、

地に手をつきながらも、

視線は逸らさない。


「夢は……

 途中で捨てるもんじゃねえ……」


最後に、


武田信玄は僕をうっすらと見た。


「中田……


 見事だに……」


その声は、

戦場の中でも、はっきり聞こえた。


武田信玄は、

ゆっくりと崩れ落ちた。


戦場は、血と煙に覆われていた。


誰もが知っていた。


甲斐の虎は、簡単には死ななかった。


後にその死を聞き、

上杉謙信は一人、声を上げて泣いたという。


「……信玄……

 お前ほどの男が……」


こうして

甲斐の国は、信長の手に渡る。


だが、

この日の戦を見た者は、

誰一人として忘れなかった。


三十九名の将が倒れ、

武田信玄が、血の戦場で最期まで立っていたことを。



【第四部 完】



__________________


武田信玄は私も好きな武将ですので、死に際はいろいろ悩みましたが、皆さんの期待を裏切ってしまったかもしれません。スイマセンです。15年で天下統一する為、あっさりでした。

感想、指摘、誤字脱字ありますので教えて頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。

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