第五部  中国地方編

第1話 結婚しました。

占術家(軍師)として多忙を極める中田である。

恋愛? している暇などない。

だから結婚も顔を見ず、条件で決めた。


結婚するので行く末を考えました。奥様の実家が気になりますよね。


■朝倉家⇒信長様に滅ぼされ断絶


■浅井家⇒信長様に滅ぼされ断絶


◎徳川家⇒信長にくっつき秀吉にくっつき秀吉死んだチャンスだ!天下をとる。


まぁこのような流れでしょうから、徳川の家臣の中から姫を選びました。



徳川家臣団。

本多忠勝の妹、菊姫様。(歴史上名前が不明ですので勝手につけました)

まぁ可愛らしいお姫様です。(美しいというわけではない可愛いほがらか)


結納の場で腕組みして睨んでいた兄・忠勝の圧は、

戦場の鉄砲より重かった。


「もし妹を、不幸にしたら……」


(殺す、だよね?

 絶対“間違えたでござる”って言いながら殺すタイプだよね?)


「……また、戦場でお会いしましょう」


こわい。

この人、笑顔ゼロで殺意だけ持ってる。


そんなこんなで、

結婚式も無事(?)に終了。




そして、初夜。


部屋は静か。

蝋燭がゆらゆら揺れている。


菊姫様は、正座。


ガチガチに緊張している。


「……中田さま」


「はい」


「中田さまは、物知りと伺いました」


(嫌な予感)


「どうすれば……

 御子(みこ)が、できるのでございましょうか」


来た。


(いや待て。

 この説明、どこから始めるんだ?

 現代でも保健体育で揉めるやつだぞ?)


「えーとですね……

 その……生命の神秘と申しますか……」


「はい!(まっすぐな目)」


「……人には“役割”がありまして……」


「はい!(さらに前のめり)」


(だめだ。

 この目は“全部聞く”目だ。)


「精子と卵子というものがありまして」


「せいし……たまご……?」


「いや、卵子は卵じゃないです」


「……?」


(詰んだ。)


「ええい!

 これはですね、実践……ではなく!」


菊姫様、ピタッと固まる。


「じ、実戦でございますか!?」


「違います!

 えーと……心の準備の話です!」


「なるほど……

 では、私は鎧を着るべきでしょうか?」


(戦じゃない。)


沈黙。


外から聞こえる虫の声。


菊姫様、ぽつり。


「……兄上は

 “中田殿は頭が切れるが、変な男だ”

 と申しておりました」


「それ、褒めてます?」


「たぶん……はい」


(本多忠勝基準の“たぶん”は信用ならない。)


やがて、

菊姫様は小さく息を吐いた。


「……今日は、

 無事に一日が終わっただけで、

 よい夜でございますね」


その言葉に、

なぜか胸が軽くなる。


「……そうですね」


僕は立ち上がり、

そっと蝋燭を消した。


部屋は暗転。


戦国の夜は、長い。


だがこの夜だけは、

妙に穏やかだった。


(……明日、生きていたら、

 また戦だな。)


外では、徳川の夜警が巡回している。


そして遠くで

本多忠勝が、腕組みしていそうな気配がした。


こわい。こわすぎる。

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