第6話 一揆が起きました。
僕と信長様は、石山本願寺へ向かうため尾張の道を進んでいた。
しかし、長嶋願証寺の地で、突如として一向一揆が勃発した。
小木江城。
そこに立てこもっていた尾張の守備隊は、あっけなく陥落した。
城門は破られ、石垣は崩れ、城下からは炎と煙が立ち上る。
信長様の弟、信興は、城の中で追い詰められ、己の命を絶つしかなかった。
血の匂いと焼ける木材の煙が混ざった空気の中、信興の叫びも、断末魔も、すぐに消えていった。
「……尾張に、また血が流れるのか」
信長様は言葉少なに、城の廃墟を見つめていた。
その目には怒りと悲しみ、そして決意が入り混じっていた。
僕は震える手で刀の柄を握り、戦の苛烈さを改めて思い知った。
石山本願寺への道は、まだ長く、そしてさらに過酷であることを、誰もが感じていた。
長嶋願証寺で起きた一向一揆は、
それまでの合戦とは質が違っていた。
相手は武士ではない。
槍や鎌を握った、農民だった。
それでも――
いや、だからこそ、戦は凄惨を極めた。
尾張・一向一揆鎮圧戦
小木江城はすでに落ちていた。
城門は焼かれ、石垣は崩れ、
その中で――信長様の弟、信興様は自害していた。
「……遅かった、か」
信長様は城跡を見て、言葉を失った。
怒鳴ることも、刀を抜くこともなかった。
ただ、歯を食いしばっていた。
農民たちの突撃
一向宗門徒たちは、逃げなかった。
逃げ場がないのではない。
逃げるという選択肢が、最初から存在しなかった。
「南無阿弥陀仏!」
「南無阿弥陀仏!!」
念仏を叫びながら、
農具を振りかざし、鎧も持たぬ身体で突っ込んでくる。
矢が飛び、槍が並び、
倒れても、倒れても、次が来る。
「なんで退かん……」
「死ぬぞ!」
叫んでも、彼らは止まらない。
死ねば極楽浄土。
それを、疑っていなかった。
鎮圧という名の地獄
鎮圧は四ヶ月に及んだ。
村を囲み、
田を焼き
倉を壊し
食料を断つ
戦ではなく、消耗だった。
飢え、疲れ、恐怖。
それでも夜になると、農民たちは現れた。
子を背負った者
老人
女
誰が戦士で、誰が民か――
もはや、区別はつかなかった。
「斬れ」
「容赦するな」
命令は短くなっていった。
僕の視点
僕は、途中から数えるのをやめた。
倒れた人数を数えても、
意味がないことに気づいたからだ。
畑だった場所は踏み荒らされ、
用水路は土で詰まり、
村は音を失っていた。
夜になると、
遠くで火が上がる。
叫び声は、風に溶けて消えた。
四ヶ月後
一向一揆は、消えた。
勝った――はずだった。
だが尾張には、
焼けた村
空の蔵
帰らぬ家族
だけが残った。
信長様は言った。
「……これが、坊主どもの戦か」
その声は、怒りよりも疲れに満ちていた。
そして僕たちは、再び大阪へ向かう。
石山本願寺は、この何倍もの規模で待ち構えている。
次はもっと、多くの人が死ぬ。
それを、誰も口にしなかった。
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