第2話 旅人になりました。

伊賀の里へ向かって、

旅人の姿になり出発しました。


くノ一二人と、僕の三人旅。

もうこの時点で怪しい。


だって――

旅人なのに、歩き方が全員そろって無音なんだもん。


「いやいや、普通もっと砂利踏むでしょ」

「……気のせいです」

「いや忍者だよね?」

「旅人です」


水戸○門みたいな感じで、

宿に泊まっては事件も起きず、

悪代官も出ず、ただただ団子を食べる旅。


「うまいですね」

「ですね」

「……伊賀の団子、罠とか仕込んでない?」

「仕込むか」


だんだん打ち解けてきました。


夜、焚き火を囲みながら雑談。

忍術の話かと思いきや、


「玄白様、好きな食べ物は?」

「え、カレー……いや、この時代ないな。味噌」

「渋いですね」


平和か。


ここで僕は固く誓いました。


職場恋愛はしない。

絶対しない。

仕事に私情は持ち込まない。


なぜなら

喧嘩する。

別れる。

気まずい。

そして何より、


周りの士気が下がる。


「大将が女関係で揉めてるらしいぞ」

↑これ、最悪。


恋愛はダメだ。

ダメだダメだ。


「………………」


ごめんなさい。

二人とも付き合ってしまいました。


いや、あれだ。

海外旅行でハメを外すやつ。

「日本じゃないし!」みたいな心理。


尾張に戻ったら別れよう。

←殺されないよね?

←忍者だよね?

←里抜け追撃とかないよね?


そんな不安を抱えつつ、

伊賀の里に到着。


普通の農村。


田んぼ。

畑。

おばあちゃん。


「ここ忍者の里だよね?」

「はい」

「全員?」

「たぶん」


全員、チラチラ見てくる。


視線が鋭い。

でも農具持ってる。

でも絶対あれ武器。


「玄白様、あれ鍬じゃないです」

「どう見ても鍬だろ」

「投げると刺さります」

「やっぱ武器じゃん!」


早速、村長さんらしき家へ。


中に入ると――

上忍・伊賀三人衆が正座で待機。


畳がきれいすぎる。

忍者、几帳面。


「よくぞ、伊賀の里へ参られた。

 中田玄白殿」


もう名前知ってる。

怖い。

戸籍どころか、昨日の夕飯まで把握してそう。


「暗殺してもらいたい。相手は鈴木重秀!」


即答。


「かしこまりました。

 手練れ五名。

 一人、領国貨幣千枚。

 計五千枚」


「五千枚!?高っ!!」


一枚約四万円。

二億円。


城が建つ。

忍者五人の年俸エグい。


「大阪の本願寺は難攻不落。

 上忍三、下忍二が最低条件かと」


「いやいや、そこを何とか!」

「何ともなりませぬ」

「お願いします!」

「難しいです」

「土下座します!」

「畳が汚れます」


…………


こうして交渉一日目、終了。


◇◇◇


2日目×

3日目×

4日目×

(団子だけ減っていく)

10日目×

(忍者、全然折れない)

20日目×

(むしろ値上げしそう)

30日目×


そして――

31日目。


「全く、あなたという人は……はぁーはぁー」


なぜか息切れしている頭領。


「三千枚でお頼み申す!」


「…………」


沈黙。


一瞬、

囲炉裏の薪がパチッと鳴る。


「……三千二百枚で」


「増えてる!?」


結果――

一ヶ月後、領国貨幣三二〇〇枚で請負契約成立。


負けたのか勝ったのか分からない。


伊賀の忍者さんとも、

なぜか信頼関係ができた。

ような気がする。

団子の好みは共有できた。


なお、くノ一二人との関係は


尾張に戻る前夜、

無言で視線を逸らされました。


生きて帰れるといいなぁ、僕。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る