第7話 あせりました。
桶狭間へ至る街道。
最初の砦で、時間稼ぎをする。
僕の中の作戦名、
ゴキブリホイホイ作戦は、ここで始まった。
「 「 「 うわあぁああああ!!」 」 」
地鳴りのような叫び声とともに、今川軍が押し寄せてくる。
合戦の始まりだ。
よし。
ここは僕が足止めしてやる。
鉄砲隊、三段構え。
砦二階のテラスに、横一列、三列縦隊で並ばせた。
「第一鉄砲隊! 前へ! 構え!」
今川軍の兵が、刀を振り上げ、歯を食いしばって突っ込んでくる。
顔は恐怖と興奮で歪み、足はもう止まらない。
引きつけろ。
もっとだ。
もっと近く
「放てぇーーー!」
ぱん!
ぱん!
ぱん!
ぱん!
乾いた破裂音が、一斉に響いた。
「第二鉄砲隊! 第三鉄砲隊! 続けざまに放てぃ!」
ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!
ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!
鉄砲玉が肉を裂く。
胸に、腹に、首に――
「ぐあっ!!」
「ぎゃああああ!!」
今川軍の先頭が、次々と倒れる。
撃ち抜かれた体から血が噴き、地面を赤黒く染めた。
足を失った者が這い、腹を裂かれた者が内臓を押さえて泣き叫ぶ。
「鉄砲隊だがや!!」
「止まれぇ! 一旦下がれぇ!!」
今川軍の進軍が止まった。
(よし……まずは成功)
だが、すぐに前へ出てきたのは弓矢部隊。
空が、一瞬で暗くなる。
「よし、この砦は捨てる!」
「装甲車へ乗り込め! 撤収!」
「なにぃ!?」
「逃がすかぁ!!」
今川軍の怒号とともに、矢の雨が降り注ぐ。
盾に突き刺さり、床板を貫き、逃げ遅れた兵の喉を射抜く。
「ぐっ……!」
「か、肩に……矢が……!」
装甲車が唸りを上げて動き出す。
その背後で、砦に火が放たれた。
ぼうっ、と炎が立ち上る。
(第一のゴキブリホイホイ、燃えたな)
今川軍は、勝ち誇ったように次の砦へ進む。
だが、そこにいたのは。
明智光秀。
「玄白殿の装甲車、見えましたがや!」
光秀の声は冷静だった。
「よし」
「伏兵の槍部隊! 弓矢の部隊!」
「撤退中の玄白様を援護せよ!」
「うおおおおお!!」
街道脇の森から、一斉に飛び出す織田軍。
長槍が、逃げる今川兵の背を、脇腹を、喉元を貫く。
「ぎゃああ!!」
「助け……!」
助けは来ない。
槍が抜かれ、次の兵に突き立てられる。
(さすがだな、明智君。やるじゃないか)
怪盗みたいに、心の中で呟いた。
第二の砦。
第三の砦。
僕と光秀は交互に指揮を取り、
今川軍を削り、削り、削り続けた。
だが―
雨が、降らない。
まだか。
まだか?
空は鉛色。
だが、落ちてこない。
不安が、胸を締め付ける。
まさか……
大雨が来ないのか?
このまま、今川軍が清洲まで?
最後の砦へ向かう途中、
各将の反応が耳に飛び込んでくる。
柴田勝家が、血に濡れた槍を振り回しながら叫ぶ。
「ちぃっ!」
「雨はどうしたがや!!」
「このままじゃ、押し潰されるがねぇ!!」
佐久間信盛は歯を食いしばる。
「兵が……持たんがね……」
「砦ごとに死体が山だわ」
前田犬千代は、狂ったように笑っていた。
「はははは!!」
「いいじゃねぇか!!」
「血の匂いが濃くなってきたがや!!」
木下秀長は青ざめた顔で兄を見た。
「兄者……」
「このままじゃ、ほんとにまずいがね……」
藤吉郎(秀吉)は、血と泥にまみれながらも、
妙に静かに言った。
「……焦るなて」
「こういう時ほど、空は裏切らんがね」
「信じろ」
「天は、必ず――」
第二の砦、第三の砦と同様に明智光秀と連携して、交互に指揮をとり。
今川軍を足止めした。
しかし・・・・
雨が降らない。まだか!まだか?
空はどんよりと曇ってはいたが雨が振り出す気配はない。
まさか、大雨こないのか?
今川軍はこのまま清洲の城まで進撃されてしまうのか?
僕は最後の砦に足早に向かいながら焦っていた。
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