第7話 訓練をしました。

クロスボウガンの訓練を、足軽兵士どもと始めました。


冷やし中華始めました、みたいな出だしになっちまったが、まあいい。

始めたもんは始めたんだわ。


「ほれ、これが新しい弓だで。引いて、狙って、離すだけだわ」


足軽たちは最初、半信半疑の顔をしていた。


「田中殿、それ、弓でも鉄砲でもねえがね?」

「なんだこれ、弦が横についてらぁ」


「とりあえず、やってみてください。」

僕がそう言うと、足軽の一人が恐る恐る引き金を引いた。


――バチン!


「おおっ!?」

「刺さったがや!」


的の板に、矢が深々と突き刺さる。


「……簡単すぎんか?」

「弓より楽だで」


「皆さん。その調子です。どんどん撃ちましょう。」

案の定、呑み込みが早い。

2日、3日もすれば、もう的の真ん中に当てよる。


「田中殿、これ、二の矢三の矢もすぐ撃てるがね」

「人、殺せるがや?」


「殺さなくてもいいです。足止めだけで十分です」


そう言うと、足軽どもは顔を見合わせた。


「……はぁ?」

「今、なんて?」


「足、止めです。致命傷はいりません。動きゃ止まれば、それでいいです。」

僕の言葉で伝わったようだ。


次は盾部隊の訓練だ。


「盾持って並びましょう!

足揃えて! 1・2! 1・2!」


「いーち! にー!」

「いーち! にー!」


「ぜんたーい、止まれぇ!」


ぴたり、と揃う。


「……すげぇ流石、日本人真面目だわ」


足軽たちもどこか誇らしげだ。


「隙間空けたら終わりですからね。」

「え?」

「だから、隙間、空けたら、槍が――」


「田中殿、また難しいです」

「要するに、詰めろってことですか?」

「そうだがや! それだわ!」


一週間もすると、見事に揃うようになった。

一列目が崩れても、二列目がすぐ埋める。

動きは遅いが、鉄壁だ。


そして、待ちに待った装甲車の完成。


戦車じゃない。

大砲載せて人力走行は無理だと判断した。


「……なんだこれ」

「田中殿、これ、ただの鉄の箱じゃ……」


「箱ではないです!装甲車です!」


周囲を鉄の盾で固め、前面にはぶっとい鉄の針を何本も突き出した。


「前に立つ奴ぁ、ビビるで」

「……いや、刺さりますね」


動力は手漕ぎトロッコ式。


「ここを、こう、上下に……」

「田中殿、もう一回言ってください」


「だから、手漕ぎ車のように! ガッコン、ガッコン!」


「……?」

「誰か分かるか?」

「さっぱりだがね」


とりあえず押してみる。


ガタガタガタガタ

ガタガタガタガタ


「うわっ、揺れる!」

「気持ち悪っ!死ぬ」


「戦の道具のので!乗り心地は求めない!」


「田中殿、死ぬとか言うのやめてください」

「不吉です!」


岩は越えられん。

平地限定だ。


だが


「……強くなったら、俺ら」

「クロスボウもあるし」

「盾もあるし」

「手榴弾も、だいぶ上手く投げれるようになったがね」


俺は頷いた。


「次は、空だな」


「……は?」

「田中殿?」

「空、ですか?」


「空を制するものは、戦を制する。」


足軽たちは黙った。


「田中殿、お願いですから、

ちゃんと分かる言葉で言ってください」


俺は紙を広げ、三角形のハングライダーの絵を描いた。


「飛ぶ」



「……」

「田中殿、また始まったがね」


凧みたいなゲリラカイト。

飛ばされる兵士には同情する。

鉄砲や弓や石で撃ち落とされるかもしれん。

パラシュート? まだ無い。(これから作ろう)


「でもな」

「空から来たら、敵、腰抜かす。」


「……田中殿」

「正直、怖いです」


「俺もだわ」


そう言って、 僕はハングライダーの開発図面を描き続けた。

尾張の空に、最初に飛ぶのは誰になるんだろうな。


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