第8話 初陣をしました。

美濃の国は、現在の岐阜県にあたる。

斎藤道三は十一歳で寺に入ったが、寺の生活に馴染めず脱走。その後、油問屋の娘と結婚し油商人として成功し、財を成した。


さらに槍や鉄砲の武芸を磨き、才覚と実力で頭角を現し、美濃国の家臣として取り立てられる。

やがて旧主を毒殺し、美濃の国を奪い取って国主となった。


しかし成り上がりであったため、旧来の美濃の家臣たちからの人望は薄かった。


道三は「美濃のマムシ」と呼ばれたが、それはこの冷酷で野心的な生き様ゆえである。


その嫡子・斎藤義龍は、父に似すぎたがゆえに愛されなかったとも言われている。


義龍は父と同じく謀略を得意とし、信長軍を河岸で待ち伏せし、鉄砲隊と槍兵を伏兵として配置した。


美濃の主力は、全長五〜六メートルに及ぶ長柄の槍部隊である。

集団で使えば間合いの長さは圧倒的だが、

一度敵に懐へ踏み込まれると、動きが鈍くなる弱点もあった。


そこに、勝敗を分ける鍵があった。



【美濃出陣】

1556年。

織田信長、二十三歳の年に、その事件は起きた。


信長の正室・帰蝶の父

斎藤道三は、遺言状にこう記した。


「美濃の国、婿・織田信長に譲る」


だが翌日。

道三は嫡子・斎藤義龍との戦いに敗れ、討ち死にする。


信長は義父の無念を晴らすため、

弔い合戦として美濃へ軍を進めた。


ここから

信長の武勇伝が始まるはずだった。

本来の歴史では、ここで信長は敗走する。


だが、今回は違う。



田中の布陣

装甲車は十両。

盾部隊、クロスボウガン部隊、

そして空、ハングライダー部隊。


今回は間違いなく、美濃の切り札

長柄の槍部隊が出てくる。


盾で受け、

装甲車で割り、

クロスボウで止め、

空から位置を暴く。


今回の指揮を執るのは

占術者、田中。


胸の高鳴りを抑えながら、僕は前を見据えていた。


諜報部である忍者部隊は、すでに先行している。

ここは敵地。

罠がないはずがない。


「木下殿(秀吉)は……。農家のご出身でしたか?」


「へぇ。

わしの父親ゃあ、昔ぁ織田さまんとこで足軽やっとりましたわ」


「親方さまに仕えさせてもろうて、

こりゃもう、ありがてぇ話だで」


(……なるほどな)


皆、感謝で動いている。

忠義というより、腹の底からの実感だ。


その時だった。


草陰が、わずかに揺れた。


現れたのは、くノ一部隊。


俺の判断だ。

女忍者のほうが、敵は油断する。

色仕掛けも使える。

趣味じゃない。たぶん。


「……田中さまぁ」


声を潜めつつ、

くノ一が膝をつく。


「この先の河原だがね、

美濃の兵が潜んどるわ」


「鉄砲隊と……

それに槍の衆が、ずらっと控えとるで」


――来た。


「ほぉら見ぃ、やっぱしだがや」


木下が低く唸る。


「美濃の連中、

こういうとこは抜かりゃあせんでな」


「伏兵あり!」


俺は叫んだ。


「ハングライダー部隊!

上空から敵の配置を洗い出せ!

見たまんま、すぐ伝えろ!」


一瞬の沈黙。


次の瞬間――


「お、おい……」


「見ろや……

空、なんかおかしないか?」


「……飛んどるぞ」


「人が……

人が飛んどるがや!!」


ざわり、と

織田方の陣が揺れた。


「た、田中さまぁ……

ほんとに飛ばしよったで……」


「こりゃあ……

美濃の連中、腰抜かすわ……」


これが

僕の初陣。


僕がやるしかない!

僕が歴史を変えるんだ!


僕の戦国時代が、今、始まった。


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