第3話 進言しました。

僕は畳に手をつき、信長様の前で頭を下げた。


「まずは訓練がそんなに必要のない武器の開発が必要かと思います。

これからは傭兵の時代、次々と入ってくる傭兵に訓練する時間はありません」


囲炉裏の火がぱちりと鳴る。


織田信長

「……ほう。

たしかに今の足軽ぁ、寄せ集めだがや。

で、田中。

そちぁ、何を使わせるつもりだぎゃ?」


「クロスボウガンの武器開発を進言します!」


織田信長

「……くろす? ぼうがん?

なんだそれぁ、聞いたことねぇ名だがや」


僕は懐から紙を取り出し、床に広げて絵を描いた。

弓、引き金、肩当て。


「洋式の弓です。

テコの原理で弦を引き、肩に当てて撃ちます。

力がなくても、狙いが定まりやすい」


前田犬千代

「ほう!

肩で撃つだぁ?

ほんなもん、弓引けん百姓でも当たるがや?」


「はい。訓練も短期間で済みます」


佐久間信盛

「なるほどのぅ……

弓は十年、槍は三年言うが、

それが要らんちゅう話だがや」


織田信長

「……面白ぇ。

鍛冶に話ぃ通して来い。

まず作ってみりゃ分かるがや」


「実は、まだあります。手榴弾の開発です」


場がざわっとする。


「火薬の中に金属の玉を詰め、

火をつけて投げます。

塀や柵の裏に隠れた敵に有効です」


木下藤吉郎(秀吉)

「ほうほう!

そりゃええがや!」


「槍じゃ届かんとこにおる敵ぁ、

あれで吹き飛ばせるっちゅう訳だがね!」


柴田勝家

「……待て」


低く、腹の底からの声。


「そんな爆ぜ物、

味方も巻き込むがや」


いくさぁ、

陣を組んで、押して、耐えて、

最後は侍が前に出るもんだがね」


織田信長


「勝家。“使い方”の話をしとるんだがや」


勝家は口を閉じた。


織田信長(続けて)

「鉄砲鍛冶と話を付けろ。

城攻めで使えりゃ、

血ぃ流す量が減るがや」


「最後に、盾の部隊を設立してください」


僕は大盾の絵を描いた。

「盾を並べて前進します。

矢や鉄砲から兵を守り、

その後ろから攻撃します」


木下秀長

「ほう……

今の足軽ぁ、

矢が飛んだだけで腰抜かしとる」


「盾があれば、前に出る度胸も出るがや」


前田犬千代

「槍ぁ前で振るもんだが、

盾がありゃ、踏み込める距離が伸びるがや!」


柴田勝家

「……だがな」


再び、重い声。


「盾に隠れ、爆ぜ物を投げ、

弓を引き金で撃つ」


「それで強くなったつもりになる兵ぁ、

いざ斬り合いになったら逃げるがや」


空気が張りつめる。


織田信長


「勝家」


短く、鋭く。


「逃げる兵を、今まで何人見殺しにしてきた?」


勝家は黙る。


織田信長

「強い兵だけでいくさして、

この国はどれだけ進んだ

弱ぇ兵でも、役を与えりゃ戦力だがや」


木下藤吉郎(秀吉)


「殿の仰せの通りだがね!」


「数を活かして、

早う終わらせるいくさぁ、

これからの世に合っとるがや!」


織田信長


「よし」


「田中の策、まずは試す」


「少人数で構わん。実戦で見せてみよ」


信長の目が、静かに光った。


囲炉裏の火が、強く燃え上がった。


新しいいくさが、

静かに動き始めていた。

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