第5話 「湯切り」の神髄
前回のあらすじ
スキル「ラーメン屋」のスキルボードにて体力にスキルポイントを振ろうとした麺汰。しかしながら、警告がでてしまい、結果振れたのは筋力であった。その結果、冒険者生活において意味のないユニークスキル「湯切り」が出現。1円も持たない麺汰は寒空の下、湯切りをして朝を迎えるのだった。
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「湯切り!」
自分の体が勝手に動く間隔。熟練のラーメン屋店員のような手さばきで湯切りをする。麺汰は料理などほぼした時のない素人。しかしスキルの恩恵かキレのある動きで湯切りを行う。
「湯切り!」
寒さをしのぐために体を動かす。徐々に空が明るみを帯びる。麺汰のスキル使用回数は1000回を優に越していた。
朝になり、冒険者ギルドに向かう。今日も依頼を探す。麺汰の冒険者ランクはGランク。一個上のFランクのクエストまでが受注できる。
~クエスト一覧~
カブカ虫の角の納品(G)、10本で1000円
ポイズンスパイダーの糸の納品(F)、1mで1500円
石羊の毛の納品(F)、1袋で2000円
「どれにしよう。カブカ虫が一番難易度が低い上に、俺が知っているモンスターがカブカ虫しかいない。ただ、どれだけ頑張っても1日に3000円程度しか稼げない。それだと今日飯は食べられるが、宿が無い。」
1日寒空の下で何も食べられえなかった麺汰。判断が鈍る。昨日まではリスクを重視していたはずが、リスクとリターンを考慮し始める。
「今日はポイズンスパイダーの糸に挑戦しよう。レベルもきっとあがりやすいだろうし、単価が1500円だから、そこそこ稼げるはずだ!」
受付にいって受注を済ませる。
森に向かい、東側に向かう。東側にはポイズンスパイダー、西側にはカブカ虫が生息している。
「うっ……臭。」
木の間に張り巡らされた白色の糸。その糸に紫の液体が滴っている。加えて
強烈な腐乱臭。糸に引っかかった獲物の死体が臭いを放っている。
ぬちゃあぁぁ。
自分に金のためだと言い聞かせて糸を回収する。目、傷口に入ると毒が回るため、できるだけ手のみに触れるように慎重に回収する。
「うわぁ……。これ一体何に使うんだよ……。」
俺は糸を回収するのに夢中で気づかなかった。蜘蛛が下から近づいていることに。
ガブッ!!
「痛ってぇ!!!!あぁぁぁ!!」
足元に強烈な痛みが走る。蜘蛛だから上にいるだろうと、上に警戒を向けていたことがあだとなった。
「このっ!!」
足にかみついた体長30cmの蜘蛛を殴る。ただかみついて離れない。自分の体に毒が回っているという恐怖が麺汰を刺激する。
「やめっろ!!」
必死になって蜘蛛を殴る。しかし蜘蛛は痛くもかゆくもないかのような態度でかみつき続ける。
必死になって動き続けた彼は毒の回りが早くなり、そのまま意識を手放したのだった。
「あれ……ここは。」
腕を動かすとぬちゃぁと嫌な感触がする。そして強烈な腐乱臭。
俺は一瞬で理解した。自分は毒蜘蛛に囚われたのだと。しかし幸いなことに腕は動かせる。毒も今のところ麻痺や命に係わるものではないと分かった。
「生き残るには脱出するしかない……。ただどうやって。」
俺には道具:テボ・寸胴の蓋(相棒)・寸胴・まな板・平ザル、スキルも湯切りしかない。
「蜘蛛は殴っても倒せなかった。現状蜘蛛を倒すのは難しい。どうにかして逃走できれば……。」
その時だった。
「きしゃぁぁ。」
蜘蛛がやってきた。まるで俺を捕食するかのような動きで。
もう残された時間は少ない。考えろ。考えるんだ俺。
「俺が異世界に来てからやってきたことはこれしかない!!」
「きしゃぁぁぁ!!!」
蜘蛛がとびかかってくる。
「今だ!!うおおおおお!湯切り!!!!!!」
平ザルを上から下に湯切る。普通の湯切りは下から上に麺を上げて、バウンドさせて湯を切るが、真逆の行動。つまり蜘蛛を勢いよく地面にたたきつける。
回数1000回を超えて熟練の域に達したユニークスキル「湯切り」の威力は絶大であり、蜘蛛は地面にて痙攣している。
「装備品変更。平ザルから寸胴へ」
装備品を寸胴にすることで張力の限界を迎え荷重に耐えられなくなった蜘蛛の糸から脱出した。
俺は蜘蛛に向かって寸胴を振りかぶる。
「じゃあな。お前との勝負俺の勝だぜ。」
ごしゃあ。地面とすれる鈍い音が聞こえる。蜘蛛は息絶えていた。
俺はもともと回収していた蜘蛛の糸を拾って、他の蜘蛛に見つからないように街に戻った。
「麺汰さん。お疲れ様です。ポイズンスパイダーの糸の納品ですね。10mですので15000円ですが、建て替えの精算後の受け渡し金額が13000円になります。」
「ありがとうございますぅぅぅ。」
俺は人目をはばからず泣いた。だって異世界にきて初めてのご飯とまともな宿に泊まれるんだよ!泣かないなんてできなかった。
異世界転移して初めて食べたご飯は、1500円で硬いパンとスープと血生臭い肉の焼き物。しかし空腹すぎて1口目は美味しかった。
ただ俺は思った。異世界の飯不味くない?絶対自分でラーメン屋開店しよう。
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やっと生活できるかもしれない水準の稼ぎを手にした麺汰。これから彼の異世界生活はどのように進んでいくのか。お楽しみに!
~筆者から~
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