第33話
吉村田屋の濃厚な余韻を力に変え、一馬はアパートに籠もって不眠不休のメンテナンスを完了させました。
修復された『白金の聖護外套』は、巨像の黄金破片を練り込むことで、より硬質で鈍い輝きを放つ「重装甲仕様」へと進化。そして一馬は、一階層の隠し扉から直通エレベーターに乗り込み、一気に未踏の深部へと降下しました。
チーン、という乾いた電子音と共に扉が開きます。
「……なんだ、この臭いは」
エレベーターを一歩出た瞬間、一馬を襲ったのは「錆びた鉄」と「生臭い肉」が混ざり合った、生理的な嫌悪感を呼び起こす異臭でした。
そこは、これまでの美しい石造りの迷宮とは対照的な、グロテスクな光景でした。壁一面をのたうち回る血管のような赤いケーブル。真鍮の歯車が肉厚な組織に食い込み、ドクンドクンと脈打ちながら、施設全体を動かしているのです。
「……機械と、生物が……混ざってるのか?」
通路の先で、何かが蠢きました。
それは、四足歩行の獣のような形をしていますが、その皮膚は金属板で継ぎ接ぎされ、口からは蒸気と共に赤い体液が滴っています。
【鑑定:バイオ・ギア(六階層・変異個体)】
説明:古代の自動機械が、周囲の有機素材(原生生物)を無理やり取り込み、自己増殖を開始した姿。損傷しても肉組織が即座に再生し、歯車が欠損部を補う不死身に近い個体。
「……ギギ、ガガガッ!」
バイオ・ギアが金属爪を剥き出しにして突進してきます。一馬は即座に『極光』を構えますが、敵の動きはこれまでのゴーレムよりも遥かにしなやかで、かつ予測不能でした。
「速い! ……だが、今の俺は五階層(あそこ)で負けた俺じゃない!」
一馬は新調した『白金の聖護外套』の肩部から、内蔵された小型のスラスターを噴射。重装甲ながらも、その機動力は以前を凌駕していました。
「食らえ、零距離射撃!」
一馬はバイオ・ギアの懐に滑り込み、キャノンモードの砲身をその「肉と金属が混ざった腹部」に突き立てました。中級ポーションの精製で培った、エネルギーの「指向性制御」が火を噴きます。
『黄金浸透波(ゴールド・インパルス)』
熱線を放つのではなく、超高密度の魔力を「振動」として叩き込む。
バイオ・ギアの肉組織は沸騰し、金属の歯車は内部から粉砕され、再生の暇も与えず爆散しました。
「……ふぅ。一筋縄じゃいかないな。六階層は……文字通りの地獄だ」
一馬は、飛び散ったオイルと血の混ざった液体を外套で拭い、さらに奥へと視線を向けました。そこには、巨大な心臓のように脈打つ「中央処理装置」が、深紅の光を放ちながら待ち構えていました。
【現在のステータスと装備】
■ パラメータ
名前: 佐藤 一馬(24)
レベル: 3.82(↑ 0.07UP)
称号: 鋼の臓器を断つ者
状態: 警戒(空気中のバイオ汚染をマスクで濾過中)
■ 装備品
武器: 魔導可変兵器・極光(アトラス・バスター)
(浸透波攻撃により、内部機構へのダメージを最小限に抑えつつ最大火力を実現)
防具: 白金の聖護外套(改)
(黄金の破片による対衝撃コーティング。バイオ液の付着を防ぐ撥水機能を追加)
道具: 銀翼の無限ポーチ(シルバー・ヴォルト)
(中身:中級ポーション、予備の潤滑油、吉村田屋の持ち帰りチャーシュー)
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