第31話
一馬は噴水で空になったペットボトルや予備のタンク、さらには無限ポーチの予備スペースにまで、ありったけの「聖なる水」を詰め込みました。その清浄なエネルギーを背に、ついに神殿の最奥、玉座の間へと足を踏み入れます。
玉座に鎮座していたのは、五メートルを超える巨躯を誇る、眩いばかりの「黄金の巨像(ヘラクレス)」でした。
【鑑定:五階層守護機・ヘラクレス(黄金のコロッサス)】
説明:五階層を統べる最強の石像。その装甲はこれまでのゴーレムを遥かに凌ぐ魔法耐性を持ち、あらゆる魔導攻撃を無効化する。
「魔導が無効なら……物理で壊すしかないか!」
一馬は新調した『白金の聖護外套』を翻し、一気に間合いを詰めました。黄金の巨像が振り下ろす巨大な拳を、強化されたバイザーの予測演算で紙一重で回避。
「食らえ!」
『極光』を槍モードで叩きつけますが、黄金の装甲はあまりに硬く、火花が散るだけで決定打になりません。逆に巨像の咆哮と共に放たれた衝撃波で、一馬は床を転がります。
「……なら、これだ!」
一馬はポーチから、噴水で汲み上げた「大量の聖水」を空中にぶち撒けました。
本来は癒やしの水ですが、あまりの魔力純度の高さに、巨像の駆動を司る「魔導回路」が一時的にショートし、黄金の装甲に微かな「ヒビ」が入ります。
「そこだッ!」
一馬は持てる全ての力を『極光』に込め、キャノンモードへの変形と同時にヒビへと突っ込みました。
ゼロ距離でのフルパワー射撃。聖水の導電性と魔導熱波が混ざり合い、黄金の巨像の内側から大爆発が巻き起こりました。
「……はぁ、はぁ……っ……死ぬかと、思った……」
爆煙が晴れた時、そこには粉々に砕け散った黄金の破片と、力なく膝をつく一馬の姿がありました。
勝利の代償は大きく、新調したばかりの『白金の聖護外套』はボロボロに裂け、右腕の骨には嫌な感触が残っています。
しかし、玉座の裏に、これまでにはなかった「二つの扉」が現れました。
一つはさらに深淵へ続く「六階層」への道。
そしてもう一つは――。
「……これ、一階層への直通エレベーターか?」
古代文明の利便性か、一定の階層を突破した者への報酬か。一馬は迷わず一階層への扉を選びました。今の自分には、これ以上の進軍は不可能です。
一階層の入り口、懐かしい土の匂いがする場所に戻ってきた一馬は、そのまま崩れるように地面に座り込みました。
しかし、その瞳は死んでいません。
「……ボロボロだ。でも、素材は手に入れた」
一馬は、ポーチの中に大量にある「五階層の聖水」と、巨像の残骸から出た「黄金の魔力片」を見つめました。
彼は一階層の安全なエリアで、再び【作業台】を広げました。
「五階層の聖水をベースにすれば、今の俺でも『中級ポーション』が作れるはずだ。自分の傷を治すだけじゃない、もっと高値で売れるやつを……」
一馬は、怪我の痛みに耐えながら、聖水を蒸留し、黄金の破片を触媒にして、これまでの「樹海ゼリー」とは次元の違う、琥珀色に輝く液体を錬成し始めました。
「壊れた装備も、もっと強固にメンテナンスしてやる。次に六階層へ行く時は……もう、こんな無様にはならない」
どん底の無職から、独学の魔導エンジニアへ。
一馬は、一階層の静寂の中で、自らの技術をさらなる高みへと引き上げるべく、狂ったように作業に没頭するのでした。
【現在のステータスと装備】
■ パラメータ
名前: 佐藤 一馬(24)
レベル: 3.75(↑ 0.15UP)
称号: 黄金を穿つ者
状態: 極限疲労(だが、創作意欲が爆発中)
■ 装備品
武器: 魔導可変兵器・極光(アトラス・バスター)(過負荷により冷却が必要)
防具: 白金の聖護外套(大破・メンテナンス待ち)
新アイテム: 黄金の中級ポーション(プロトタイプ)
(驚異的な治癒力と一時的な魔力増幅効果を持つ)
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