第21話
二階層の湿った土の匂いが消え、代わって鼻を突いたのは、乾いた石塵と古びた油のような、無機質な臭いでした。
一馬はミスト・バタフライの背後にあった巨大な樹洞を下り、ついに三階層へと到達しました。そこは、これまでの自然の洞窟とは一線を画す、精緻に切り出された石材で構築された広大な「地下都市」の跡でした。
「……すごい。これ、全部人間が作ったのか?」
一馬は、天井を支える巨大な石柱を見上げました。壁面には見たこともない幾何学模様が刻まれ、等間隔に配置された魔導灯が、数千年の時を経てもなお、かすかな燐光を放っています。
しかし、その静寂を破ったのは、規則的な「ガシャン、ガシャン」という金属音でした。
石柱の影から現れたのは、石の身体に金属の関節を持つ、全高2メートルほどの四足歩行機械。かつてこの都市を守っていたであろう、自動機械(ゴーレム)です。
【鑑定:ガーディアン・ドローン(三階層歩行型)】
説明:魔力回路によって自律行動する防衛兵器。外部侵入者を排除するプログラムが実行中。装甲は一階層のボスの剛毛を凌ぐ硬度を持つ。
「……来るか!」
ゴーレムの頭部にある単眼が赤く光り、一馬に向かって猛然と突進してきました。一馬は即座に『黄金の魔導戦槍』を構えますが、相手は生物ではありません。痛みも恐怖も感じない、ただの「殺戮機械」です。
黄金の槍を叩きつけると、激しい火花が散りました。しかし、相手の石造装甲には傷一つ付きません。
「硬すぎる……! でも、今の俺にはこれがある!」
一馬は、腰の『銀翼の無限ポーチ』に手を突っ込みました。一軒家ほどの空間を持つポーチの中には、事前にホームセンターPROで買い溜めていた「工業用潤滑油」の大樽や、「大型の鉄筋カッター」など、潤沢な物資が詰まっています。
「機械相手なら、搦め手でいく!」
一馬はポーチから大量の「工業用オイル」を床にぶち撒けました。
突進してきたゴーレムの足元が滑り、体勢が大きく崩れます。さらに、一馬はレベル3で解放された『回路設計』の知識を総動員しました。
「……そこだ、魔力のバイパス回路!」
ゴーレムの関節部分に、熱を帯びた槍の先端を「点」で叩き込み、内部の魔力伝達経路を直接焼き切りました。
バチバチッ! という電気火花と共に、ゴーレムは沈黙し、ただの石塊へと戻りました。
「……ふぅ。力押しじゃ勝てない。でも、俺の技術(クラフト)なら、この鋼鉄の迷宮も歩いていける」
一馬は沈黙したゴーレムの胸部から、鈍く光る「魔導コア」を抜き取りました。
それは、一階層や二階層の自然な魔晶石とは異なる、人の手によって最適化された「人工魔石」でした。
「これがあれば……俺の装備も、もっと『機械的』に進化させられるな」
一馬は、無機質な石の廊下の先を見据えました。この迷宮の奥には、かつての文明が遺した「真の英知」が眠っているはず。彼はその可能性を求めて、さらに歩を進めました。
【現在のステータスと装備】
■ パラメータ
名前: 佐藤 一馬(24)
種族: 人間(男)
レベル: 3.10(↑ 0.09UP)
称号: 迷宮の解読者
状態: 集中(対機械戦闘への適応中)
所持金: 412,000円
■ 装備品
武器: 黄金の魔導戦槍(ゴールデン・パイルバール)
(三階層の装甲には決定打不足を感じ、強化案を模索中)
頭部: 対魔毒・密閉型タクティカルマスク
頭部: 耐衝撃・広角気密ゴーグル
道具: 銀翼の無限ポーチ(シルバー・ヴォルト)
(中身:食料、潤滑油、各種工業資材、予備の魔石、大量のゴミ袋)
防具: 金獅子の隠密外套(ゴールド・ステルス・コート)
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