第19話
一馬が自作の「霧払いランタン」を掲げると、真珠色の霧が渦を巻いて吸い込まれ、ついにその「源」が姿を現した。
巨木の間に広がる巨大な繭のような空間。そこに鎮座していたのは、翼を広げれば5メートルはあろうかという、息を呑むほど美しい巨大な蝶だった。その翼はステンドグラスのように複雑な紋様を描き、羽ばたくたびにキラキラと輝く死の鱗粉――「迷いの霧」を撒き散らしている。
【鑑定:ミスト・バタフライ(二階層エリアボス)】
説明:幻覚と毒を操る樹海の支配者。物理的な攻撃力は低いが、その鱗粉を吸い込めば精神を破壊され、生きたまま苗床にされる。
「……デカい。ウォンバットとは、比べものにならないプレッシャーだ」
一馬が足を踏み出すと、ミスト・バタフライは大きく羽ばたいた。瞬間、ランタンが吸い込みきれないほどの濃密な霧が押し寄せ、視界が白一色に染まる。
「グッ……、また幻覚か……!?」
霧の中に、自分を嘲笑う同級生の顔や、冷たい視線を送る社会の群衆が浮かび上がる。しかし、一馬は強く槍の柄を握りしめた。
「もう……騙されない。俺は、俺の力でここに立ってるんだ!」
一馬は【作業台】の「即時加工機能」を応用し、槍の先端にある熱蓄積機構を全開にした。
黄金の魔晶石が激しく明滅し、バールの先端が太陽のように白熱する。
「お前の霧ごと、焼き払ってやる!」
一馬は、槍を勢いよく振り抜いた。
黄金の槍から放たれた衝撃波と熱風が、周囲の霧を一瞬で蒸発させる。視界が開けたその瞬間、一馬は翼の付け根――唯一の弱点である柔らかい節を捉えた。
槍の噴射機構を最大出力で起動。一馬の身体が砲弾のように加速し、黄金の戦槍が巨大蝶の胸部を深く貫いた。
「ギィィィィッ!」
耳を裂くような悲鳴を上げ、ミスト・バタフライの巨体が地面に激突する。崩れ落ちる巨体から、まるで雪のように白い「絹のような鱗翅」と、一階層のボスよりもさらに巨大な「銀の魔晶石」がこぼれ落ちた。
『二階層エリアボス:ミスト・バタフライ討伐。レベルアップ……大幅上昇』
「はぁ、はぁ……っ。勝った……」
霧が完全に晴れ、頭上には樹海の巨木の隙間から、ダンジョン特有の淡い光が差し込んでいた。一馬は全身の力が抜け、その場に座り込んだ。
レベルは、ついに「3」の領域へと足を踏み入れた。
【現在のステータスと装備】
■ パラメータ
名前: 佐藤 一馬(24)
種族: 人間(男)
レベル: 3.00(↑ 0.72UP)
称号: 幻惑を断つ者
状態: 極度の魔力枯渇(だが精神は極めて澄んでいる)
所持金: 412,000円
■ 装備品
武器: 黄金の魔導戦槍(ゴールデン・パイルバール)
(ボス戦で最大出力を出し、現在オーバーヒート中。要メンテナンス)
防具: 金獅子の隠密外套(ゴールド・ステルス・コート)
(鱗粉により表面が銀色にコーティングされている)
頭部: 対魔毒・密閉型タクティカルマスク
道具: 銀の魔晶石(二階層ボスドロップ)
(黄金よりもさらに高密度なエネルギーを秘めた、超高純度の核)
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