第18話

ニンニクの香りが残る部屋で十分な休息を取った一馬は、潤沢な資金を背景に消耗品を補充し、再び二階層「静寂の樹海」へと足を踏み入れた。

​黄金の外套をたなびかせ、順調にマンイーターを退治しながら奥へと進む一馬。しかし、ある地点を境に、森の空気が一変した。

​第十三章:白銀の迷宮と、狂った方位

​「……霧? さっきまでは晴れていたのに」

​視界を埋め尽くしたのは、真珠のような光沢を持つ、異常に濃い白霧だった。

一馬は即座にゴーグルを調整し、方位磁石を確認する。しかし、磁石の針はまるで意思を持っているかのように、ぐるぐると不規則に回転を続けていた。

​「ナビ、現在地をロストした。マッピングを表示してくれ」

​『……警告。周囲の魔力濃度が急上昇。外部走査に強いノイズが発生しています。【鑑定】による地形把握、および現在地の特定が不可能です』

​「何だって……!?」

​頼みの綱である【鑑定】すら、霧に含まれる微細な魔力粒子によって遮断されていた。一馬は慎重に、来た道を戻ろうと一歩踏み出す。だが、その瞬間。

​「え……?」

​目の前の霧が晴れ、そこには**「一馬の自宅アパートのドア」**がポツンと佇んでいた。

​「なんでここにドアが……。いや、これは罠だ」

​一馬は自分に言い聞かせ、槍を構える。すると今度は、霧の中から「一馬、夕飯よ」と、遠い昔に聞いたはずの母親の声が響いた。視界の端を、現実世界では失ったはずの穏やかな日常の風景がよぎる。

​【鑑定(強制再起動)】

対象:幻想の霧(幻覚性魔力霧)

説明:吸入、または皮膚接触により、対象が「最も見たい光景」や「過去の記憶」を投影する。深入りすれば精神が森に溶け、マンイーターの苗床となる。

​「……っ、危なかった。優しくなんてないんだ、このダンジョンは!」

​一馬は、無理やり幻覚を振り払うために、自分の腕を強くつねった。

磁石も鑑定も頼れない。この「迷いの霧」の中では、ハイテクな装備よりも、一馬自身の「直感」と「生存本能」だけが頼りだった。

​一馬は【作業台】を即座に展開した。

材料は、さっき倒したマンイーターから剥ぎ取った「魔力吸収の種子」と、PROで買った予備の「強力なLEDライト」だ。

​「視覚がダメなら、魔力を『吸う』道標を作るしかない!」

​『クラフト完了:魔力吸引式・霧払いランタン』

説明:周囲の魔力霧を強制的に吸収・圧縮する特殊光源。ごく狭い範囲だが、真実の視界を確保する。

​一馬がそのランタンを掲げると、シュルシュルと音を立てて霧が吸い込まれ、黄金の光が道を照らし出した。幻覚のアパートは消え、そこには無数の白骨が転がる「マンイーターの墓場」が広がっていた。

​「……あぶねぇ。一歩間違えたら、あの骨の仲間入りだった」

​一馬は冷や汗を拭い、ランタンの光を頼りに、霧の向こう側に潜む「霧の発生源」を叩き潰すべく、静かに、しかし力強く踏み出した。

​【現在のステータスと装備】

​■ パラメータ

​名前: 佐藤 一馬(24)

​種族: 人間(男)

​レベル: 2.28(↑ 0.03UP)

​称号: 樹海の開拓者

​状態: 精神的疲労(幻覚による動揺)

​所持金: 412,000円

​■ 装備品

​武器: 黄金の魔導戦槍(ゴールデン・パイルバール)

​頭部: 対魔毒・密閉型タクティカルマスク

​道具: 魔力吸引式・霧払いランタン

​(霧を吸い込み、視界を確保する特製デバイス。吸い込んだ霧をエネルギーに変換可能)

​防具: 金獅子の隠密外套(ゴールド・ステルス・コート)

​道具: 樹海の恵み・濃縮魔導ゼリー(残り3個)

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