第16話
二階層「静寂の樹海」は、一階層のような無機質な岩場とは異なり、生命の執着が肌にまとわりつくような場所でした。一馬は新調したゴーグル越しに、湿り気を帯びた深い緑の闇を見据えます。
「……やはり一階層とは『殺意』の質が違う」
ゴーグルとマスクのおかげで、宙を舞う毒粉はもう怖くありません。しかし、一馬が巨木の根を踏み越えた瞬間、足元の腐葉土が爆ぜるように跳ね上がりました。
「しまっ……!」
地面から飛び出したのは、赤黒い棘に覆われた無数の「蔓(つる)」でした。それは生き物のようにしなり、一馬の足首を捕らえ、強引に森の奥――巨大な「口」のように開いた食人花(マンイーター)へと引きずり込もうとします。
「……甘く見るな!」
一馬は、黄金の魔導戦槍(ゴールデン・パイルバール)を地面に突き立てました。槍に内蔵された黄金魔晶石が輝き、瞬間的な熱量を解放します。
ジジジッ! と肉が焼けるような嫌な音が響き、熱に弱い植物の蔓がたまらず一馬を離しました。自由になった一馬は、そのまま槍の噴射機構を起動。一直線に食人花の核へと突き込み、熱線でその内部を焼き尽くしました。
『食人植物:マンイーター・ウィップ討伐。素材「強靭な蔦」および「魔力吸収の種子」を獲得』
「ふぅ……。一瞬でも反応が遅れたら、そのまま肥料にされるところだった」
一馬は荒い息を整えながら、周囲を慎重に【鑑定】しました。すると、マンイーターが守っていた影に、見たこともないほど鮮やかな色彩を放つ草花と、宝石のように透明な液体を湛えた果実が実っているのを見つけました。
【鑑定:月光の雫草(げっこうのしずくそう)】
説明:高度な魔力回復効果を持つ希少薬草。抽出液は高級ポーションの主原料となる。
【鑑定:琥珀の蜜果(こはくのみつか)】
説明:極めて高い糖度と、疲労回復成分を含む樹海の果実。
一馬の脳内に、枯渇した銀行残高を埋めるためのアイデアが閃きました。
「……そうだ。これらをそのまま売るんじゃなくて、俺の【作業台】で『超濃縮エネルギー・ゼリー』に加工すればどうだ? 探索者なら、かさばらずに一瞬で栄養と魔力を補給できる食料を求めているはずだ」
一馬は慎重に素材を採取し、拠点へと戻りました。
PROで買った保存用のパウチ袋に、錬成した「月光の雫草」のエッセンスと「琥珀の蜜果」の果汁を黄金比で配合。さらに、マンイーターの種子から抽出した「魔力安定成分」を加えることで、市販品とは比較にならない保存性と即効性を持たせました。
『クラフト完了:樹海の恵み・濃縮魔導ゼリー(プロトタイプ)』
説明:一口で疲労をリセットし、魔力を急速充填する次世代の携帯食。
「よし。これを『ハンドメイドの健康食品』として出品すれば……今度こそ、活動資金を安定させられるはずだ」
一馬は、自らの知恵で手に入れた新素材を誇らしげに見つめました。弱さを自覚したからこそ、彼は「力」だけでなく「知恵」でも二階層を攻略し始めていました。
【現在のステータスと装備】
■ パラメータ
名前: 佐藤 一馬(24)
種族: 人間(男)
レベル: 2.25(↑ 0.03UP)
称号: 樹海の開拓者
状態: 良好(金策への希望)
所持金: 2,300円(※これから新製品を出品)
■ 装備品
武器: 黄金の魔導戦槍(ゴールデン・パイルバール)
(近接・中距離対応。熱出力による植物特効あり)
頭部: 対魔毒・密閉型タクティカルマスク
頭部: 耐衝撃・広角気密ゴーグル
防具: 金獅子の隠密外套(ゴールド・ステルス・コート)
道具: 樹海の恵み・濃縮魔導ゼリー
(自作の新製品。自分用のストックも作成済み)
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