第15話
一馬は黄金の装備に身を包み、アイアン・ウォンバットが守っていた奥の隠し通路へと足を踏み入れました。そこには、垂直に切り立った巨大な縦穴があり、一階層の岩場とは明らかに違う、湿り気を帯びた「生の匂い」が吹き上がってきていました。
「……ここが、二階層か」
長い梯子を下りきった一馬が目にしたのは、天井が見えないほど高くそびえ立つ巨木の群れでした。岩肌に代わって地面を覆うのは発光する苔と腐葉土。幻想的な光景に一瞬目を奪われたその時、頭上で羽音が響きました。
「……ッ、何だ!?」
青白く光る巨大な蝶が数羽、一馬の頭上を舞い、美しい輝きを持つ粉を振りまきました。反射的に息を止める間もなく、その粉が肺に侵入します。
「が……はっ! 喉が……焼ける……!」
凄まじい激痛。視界が急速に霞み、心臓が爆音を立て始めます。全身の力が抜け、膝をつく一馬。一階層の毒よりも遥かに強力で即効性の高い「麻痺毒粉」でした。
(死ぬ……ここで、俺は……!)
意識が遠のく中、一馬は震える手でポーチから自作の『解毒解呪ポーション』を取り出し、無理やり喉に流し込みました。
数秒後、焼けるような感覚が引いていき、呼吸が戻ります。
「はぁ、はぁ……っ。たまたま……作っておいて、良かった……」
一馬は冷や汗でぐっしょりになりながら、立ち上がりました。黄金の装備という「力」を手に入れ、どこか浮ついていた自分に気づかされます。ここは、一歩間違えれば即座に命を奪われる、本当の異世界なのだと。
一度アパートの自室に戻った一馬は、残り少ない売上金を握りしめ、再び「ホームセンターPRO」へ向かいました。
「マジックアイテムがあっても、それを使いこなす『生存技術』が足りない……」
一馬が買ったのは、現場の粉塵作業に耐えうる「最高等級の防塵マスク」と、気密性の高い「防曇ゴーグル」でした。今の彼には、豪華な装飾品よりも、呼吸を守るためのプラスチックとゴムの塊が必要でした。
拠点に戻り、一馬は【作業台】を起動しました。
PROで購入したマスクとゴーグルのフレームを、スパイダーの糸を練り込んだ「特製粘着布」で補強し、隙間を完全に塞ぎます。さらに、フィルター部分に浄化効果のある魔石の粉末を極薄く定着させました。
『クラフト完了:対魔毒・密閉型タクティカルマスク』
『クラフト完了:耐衝撃・広角気密ゴーグル』
鏡に映った自分の姿は、黄金の外套に無機質な黒いマスクという、ひどくアンバランスなものでした。しかし、それが「生き残るために足掻く男」の真の姿だと、一馬は自分に言い聞かせました。
「俺は弱い。レベル2になっても、マジックアイテムを持っても、死ぬときは一瞬だ……。気を引き締めろ、佐藤一馬」
暗い押し入れの向こう側、二階層の深い緑の闇を見据え、一馬は今、本当の意味での「探索者」としての覚悟を刻みました。
【現在のステータスと装備】
■ パラメータ
名前: 佐藤 一馬(24)
種族: 人間(男)
レベル: 2.22(↑ 0.02UP)
称号: 黄金を統べる者
状態: 警戒(毒へのトラウマと慎重さ)
所持金: 2,300円(ほぼ底をついた)
■ 装備品
武器: 黄金の魔導戦槍(ゴールデン・パイルバール)
頭部: 対魔毒・密閉型タクティカルマスク
(PRO製マスクをスパイダーの糸で強化。魔力のフィルターで粉塵・毒を遮断)
頭部: 耐衝撃・広角気密ゴーグル
(視界を確保しつつ、粘膜からの毒侵入を完全にガード)
防具: 金獅子の隠密外套(ゴールド・ステルス・コート)
道具: 緊急用・解毒解呪ポーション
(残り1本:早急に補充が必要)
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