業者現る
便槽ライフも三日目。
昨日、俺と佐藤の“便槽友達”コンビは、ぽちゃん音に笑いながら慣れ始めていた。
水面に顔を出して、ちょっとした会話を交わす。便槽の中で交わす日常は、まるで別世界の暮らしだ。
だが、平和な日常は突然破られる。
「あの音、やっぱりおかしいよな…」
デスクの向こうから聞こえる声。
――そう、先日、変な音を聞きつけていた同僚、田中だ。
田中は、普段はおとなしいが、やたら几帳面で正義感が強い男だ。
「まさか便槽に…いや、いやいや、そんなはずは…」
独り言をつぶやきながらも、田中は業者を呼んでいた。
一人の音が現れた
俺は便槽の中で佐藤と顔を見合わせる。
――ついに、便槽ライフに外の世界が侵入してきたか。
ドアが開くと、腕に工具をぶら下げた男性が入ってきた。
「何か不具合はありますか?」
俺はぽちゃん、と水面の揺れに合わせて小さく手を振る。
佐藤も慌てて水面から顔を出す。
業者は一瞬固まる。
「…あの、ここに人が…?」
俺たちはニヤリと笑う。
――まあ、びっくりするのも無理はない。濡れた二人が便槽の中で浮かんでいるのだ。
田中もドアの端から顔を出し、目を丸くしている。
「…こ、これは…説明が必要ですね」
俺はぽちゃん、とまた水面に揺れる音を立てる。
「はい、社内便槽ライフです。説明すると長くなりますが…」
業者は困惑しつつも、便槽の中の俺たちを指さし、佐藤も説明に加わる。
「昨日の昼から…こうして…」
ぽちゃん、と水面に落ちる音に合わせて、俺たちは笑いをこらえきれない。
業者はついに肩をすくめ、工具を置いた。
「…まあ、点検の必要はなさそうですね」
田中もため息をつき、腕組みをする。
「…本当に、会社って何が起きるかわからないな」
俺たちは便槽の中で肩を寄せ合い、笑った。
――外の世界も巻き込んでしまったが、便槽ライフはまだまだ終わらない。
ぽちゃん、とまた水面が揺れる。
そして俺は心の中で呟く。
「次は…どんな非日常が待っているのだろうか」
社内便槽ライフは、今日もシュールに続く。
便槽 @njdmwj
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます