便槽友達の誕生
社内便槽生活も二日目。
昨日、自分から飛び込んだ便槽で、ぽちゃん音を聞きながらひとりニヤニヤしていた俺。
しかし今日は違う。今日は…新しい出会いがある予感がした。
昼休み、便槽に身を沈めていると、隣のトイレから小さな声が聞こえた。
「…えっと、誰かいますか?」
振り向くと、そこには見知らぬ中年男性が、手を震わせながら便槽に腰をかけている。
――どうやら、社内便槽には俺以外にも“便槽挑戦者”がいたらしい。
「お、お前も…便槽ライフに挑戦してるのか?」
俺は水面に顔を出し、にっこり笑う。
男性は緊張で顔を赤くしつつ、うなずいた。
「名前は…佐藤です。いや、昨日…ちょっとした事故で…」
どうやらトイレの配管を点検していたら、誤って便槽に落ちてしまったらしい。
――なるほど、便槽ライフへの偶然の参入者か。
俺は水面の波紋を見ながら、軽く手を振る。
「俺は…名前は言わなくていい。便槽仲間ってことで」
佐藤は少し笑い、ぽちゃん、と便槽に落ちる小さな音にびくつきながらも、同じ水の中で体を浮かべる。
――なんだ、これは。シュールすぎる友情だ。
二人で便槽の中に浮かびながら、俺たちはさっそく“便槽ルール”を作ることにした。
水中ストレッチは必須
ぽちゃん音を記録して、一日の出来事を便槽内で報告
水面の波紋で即席ゲーム
落ちてくるものには全てリアクションする
佐藤は少し驚いていたが、すぐにこのシュールなルールに乗っかってきた。
「なるほど、これは…社内便槽の新しい楽しみ方ですね」
そして、ぽちゃん、と水面が揺れる。二人は顔を見合わせ、声を出して笑った。
――ああ、俺は便槽生活の極意を知っている。
孤独じゃない。仲間ができたのだ。
午後になると、便槽の中で小さな会話も始まった。
「昨日はどうやってここまで落ちたんですか?」
「まあ…迷子になるというか、偶然というか…」
「なるほど、偶然が便槽を作ったんですね」
便槽の中で交わす、奇妙な会話。
水面には波紋が揺れ、ぽちゃん、と何かが落ちる。
俺たちはその度に大げさなリアクションを取り、笑い合う。
――社内便槽ライフは孤独じゃない。
シュールな非日常は、友達と共有するともっと面白くなるのだ。
そして俺は、水面に浮かぶ自分と佐藤の影を見て、心の中で呟く。
「明日も、便槽ライフは続く…」
ぽちゃん、とまた落ちる音が、便槽内に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます