対面

四日目の朝。便槽生活ももう慣れてきた…かと思いきや、今日はなんだか妙に落ち着かない。

なぜなら、昨日から水面の揺れや「ぽちゃん」の音がやけに規則的で、誰かが近くにいる気配がするのだ。

そして、ついに玄関ドアの向こうから、足音が聞こえた。規則正しい、でも確実に俺の存在を意識しているような足音。

「…あ、あの、誰かいますか?」

俺は便槽の中から声を張る。すると、足音は一瞬止まった。

そしてドアが開き、現れたのはこの家に住む女性だった。

女性はスーツ姿で、表情は完全に平静…だったのだが、便槽の中の俺を見た瞬間、顔が一瞬凍った。

「な、なに…!?」

その声と表情に、俺は思わず吹き出しそうになる。

――いや、俺も驚いたけど、お前もか!

女性は後ずさりし、玄関の外に向かって駆け出した。

「ちょっと、ちょっと待って!」

俺が叫んでも、女性はもうドアを開けたまま外へ走り去る。

その間、水面の波紋は静かに揺れ、ぽちゃんと小さな音を立てるだけ。

便槽の中に一人取り残された俺は、天井を見上げながら思った。

――結局、今日もシュールすぎる一日だった。

水に浸かり、びしょ濡れの髪を振りながら、俺は小さくつぶやく。

「…明日は、もっと奇妙なことが起こるんだろうな」

便槽は答えてくれない。

そして、ぽちゃん、とまた何かが落ちる音がした。

――便槽ライフは、まだまだ終わらなそうだ。

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