第3話 ライオンの吐息

真っ暗で見えない


この

どろりと渦巻く

液体には、


底がない



ボクは次第にがんじがらめになって


逃れられなく

なる


何から?


    ライオンの吐息小さな春の闇


あの時、


救ってくれたのは

にじだった


虹は、

瑞知みづち。おまえは透明だから、いいんだよ」


言う。


「なにが、いいんだよ」


途端に口をとざ


「答えなんてねえんだろ。ちっ、無責任」


「先生にむかって、その言いぐさはねえだろうよ」

はははあと、嘘くさく笑う虹


「うるせえ、虹。無責任やろうめ」

「はははあ」


「先生は導いてくれるもんじゃねえのか。中途半端に助けるなよ」


「だからおまえはさ、サン=テグジュペリみたいなもんなんだよ。

 なんども言ってんだろ」


花瓶には

複雑な色の花が一輪、刺さっていた


花片はなびらの先は

ちりちりと焦げている


    サン=テグジュペリといふ名の冬薔薇ふゆそうび



「意味、わかんね」


だからな、

とひと息ついてから


わがままでいんだよ

と虹は言った。


「ますますわかんねえよ」


虹、

ボクはまだあの頃と同じ

透明のままだろうか


けがれてしまったろうか


教えてくれよ



ライオンの吐息は

ボクの記憶を破壊する

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