第17話:二十年の重みと一点突破の知恵
「……あなた、誰? 今、ここは立ち入り禁止よ」
ニキは涙を拭い、毅然とした態度でカイトに向き合った。 カイトは答えず、懐から一つの古びた魔導スクロールを取り出し、彼女へ差し出した。
「オサマレの魔術学院にいたアキリという男からの伝言だ 。……『君の勤勉さなら、これが理解できるはずだ』ってな」
「アキリ先輩……? あの、変り者の……」
ニキは驚きながらもスクロールを受け取った。 そこに記されていたのは、アキリが二十年間にわたり記録し続けた「龍脈の深層振動(ディープ・パルス)」の観測ログと、カイトが再構築したその制御理論だった 。
ニキの目が、瞬時に見開かれた。
「……これ、は……。今までの理論では『誤差』として捨てられていた波形……? でも、私の集めた土壌データと、このログを照らし合わせれば……」
彼女の「汎用的な知識」が、アキリの「一点特化の知見」というパズルをはめることで、一つの巨大な回路(システム)として完成していく。 彼女は決して無能ではなかった。 ただ、広大な情報の海を繋ぎ合わせる「特異点」を持っていなかっただけなのだ。
「視えるわ……! 薬草が枯れているのは病気じゃない。龍脈の逆流による『魔力酔い』……。この地点に、特定の周期で魔力を流せば――!」
ニキは駆け出した。 カイトは『シンクロ(世界同調)』を使い、彼女が進むべき龍脈の「正解の糸」を光り輝かせ、そっと導いた 。
ニキの手が、枯れかけた薬草の根元に触れる。 彼女は全教科で培った「制御力」を一点に集中させ、アキリの理論通りに魔力の拍動を整えた。
瞬間。 茶色く変色していた薬草が、鮮やかな緑へと息を吹き返した。 都市全体を包んでいた澱んだ魔力の霧が晴れ、龍脈が本来の澄んだ輝きを取り戻していく 。
「……やった。……私、やったんだわ!」
ニキは叫んだ。 その瞳は、歓喜と、そしてかつてない「理解」の熱に焼かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます