第5話 不可視の速威

「おい、そこの不審な男! 何をジロジロ見ている!」

 広場の隅で、衛兵たちが一人の少年に因縁をつけていた。ジュアだ。彼はエレナを助けるために物資を工面しようとして、不当な「路上占有罪」を突きつけられていた。

「離せよ! 僕はただ、ここで……!」

「黙れ! 復興官様の許可なく広場を歩くのは重罪だ。……ほう、この袋の中身はなんだ? 没収だな」

 衛兵がジュアを突き飛ばし、なけなしの麦が入った袋を奪おうとしたその時――。

 カイトが動いた。

 

 シュンッ、と空気が鳴る。

 

 次の瞬間、衛兵の手から袋が消えていた。

 衛兵は何が起きたのか理解できず、空を掴んだまま固まっている。カイトは数メートル離れた場所で、ひょい、と袋を肩に担いで立っていた。

「……あ? てめぇ、いつの間に……」

「落としたぜ、坊や。……あ、悪い。そこの衛兵さん。これ、この子の私物だよな?」

 カイトの動きは、ジュアの目にも、衛兵の目にも「テレポート」のようにしか見えなかった。

 怒り狂った衛兵が剣を抜こうとしたが、その瞬間にカイトが放った「圧」だけで、衛兵の膝がガクガクと震え、剣を鞘から抜くことすらできなくなった。

「な、なんだ……この男……化物か……?」

 衛兵たちは這う這うの体で逃げ出していった。

 

「……あんた、すごいな。今の動き、全然見えなかった」

 ジュアが驚愕の面持ちでカイトを見上げる。

 

「おじさん……もしかして、どこかの凄腕の冒険者?」

「……おじさん?」

 カイトの頬が引きつった。

 

「いや、俺、まだ二十代半ばなんだけどな。おじさんって呼ばれるほど、老けて見えるか?」

「えっ、あ、ごめん! 落ち着いてるから、もっと年上かと……」

 ショックを受けつつも、カイトはジュアの家に招かれることになった。

 

「これ、着てくれ」

 

 ジュアが差し出したのは、数枚の古着を繋ぎ合わせ、デブドの私兵たちが着ている制服に似せて改造した服だった。

「今の恰好じゃ目立ちすぎるからな。これを着て、上から泥でも塗れば、少しは紛れ込める」

 カイトはその粗末な偽装服を、自分のチュニックの上から羽織った。

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