第6話 §黒いローブの少年§

 黒いフードのついたローブというこの街ではあまり見かけない装いの少年はたくさんの人が行き交う街を颯爽と歩いて行く。


 一見目立ちそうな黒ずくめの服装であるにもかかわらず、不思議と誰も彼に気付いてないかのように少年に目を向ける者はまったくいなかった。


 いや、気付いていないどころか誰にも彼が見えていないようにも思えた。なぜなら、この装いで隣を通っても誰ひとり彼の方を見ない。


 少年は程なくダバンたちが泊まっている宿を突きとめた。


 宿の一室に少女リサは閉じ込められていた。

 少女を閉じ込めた部屋の前には仰々ぎょうぎょうしく四人の兵士が見張りをしている。


 その兵士たちを見ながらバンドラが呟く。

「フン、たかが小娘一人に軍の兵士が四人も見張りか……」


 バンドラが部屋に入り、リサに話し掛ける。

「お前、本当に、それほど凄い力を持っているのか?」

「私にそんな力などありません。あなたたちは一体何を言っているのですか?」

 リサはキリっとした表情で言う。


「ふうん、俺もそう思う。ダバン様やギレイル様は、一体何を言っているんだ……まあ、俺一人の力でも城の奴らを皆殺しにすることはできるぜ」

 バンドラは不気味な笑みを浮かべる。


「そんな無茶なことはやめてください。あなたたちは王や城の兵士たちのことを何も分かっていません。命を落とすだけです。やめなさい」

 少女はバンドラを睨みつけあきれたように言う。


「フン、バカにしてるぜ! このガキ、なんでお前が俺に命令口調なんだぁ? まあいい、いくさのことなど何も知らないガキに腹を立ててもしょうがない。夜までここで待ってろ!」

 そう言って、バンドラは荒々しくドアを閉め部屋を出て行った。


 その頃、宿屋の入り口で少年が宿屋の主人と話をしていた。


「今晩、ここに泊まれないかな」

「悪いな。今日はいっぱいなんだ。別のところに行ってくれ」


「なんだい、そんなにお客さんがいっぱいだなんて、今晩は街でお祭りでもあるのかい?」

「いいや、知らねえが、今日は満員なんだよ」


「どこかの団体さまでも泊ってんの?」

「バーカ、個人情報だ。言えねえよ。さっさと帰れよ。泊まるとこ探してんのなら、早く他をあたって宿を見つけねえと……この街は城門があるとはいえ、この辺も夜になると物騒だぞ」

「ふうん」

 主人が少年を睨みつけ、手で追い払うようにする。


 少年がチラッとロビーの奥の方に目を向けると、主人がもう一度きつい口調で、

「いい加減にしとけよ」

 と言いながら出口を指差す。


 個人情報というのもあるのだろうが、ダバンたちが主人に金を渡し、リサをかくまっているのを口封じしていることは想像がついた。


 少年は宿の外に出て、出口のところでローブにくるまってダバンたちが出てくるのを待つことにした。

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