第4話 §城塞の王国ディオレラ王国§

 ディオレラは大きな街だ。城塞の王国と言われるだけあり街全体が城壁に囲まれている。この大きな城壁を街の者は外の城壁と呼び、その外の城壁の中に商人たちが暮らす街がある。

 そして、その街の中に、更なる城壁で囲まれたディオレラ城がある。


 この街を支配し、軍を統率しているのがディオレラ王だ。

 しかし、このディオレラ王はヴェールに包まれた存在だった。

 この王は一部の側近の者しか、その姿を見た者はおらず、街の住民はもちろんのこと、城内の職務に従事している者たちですら王の顔を見たことがないほどだった。


 ディオレラ城には二つの軍隊が存在した。

 一つは城の外で敵を攻撃したり、城を外からの攻撃から守ったりするディオレラ軍と呼ばれる軍隊。

 そして、もう一つは城の城内で王や王の側近の者たちを警護する親衛隊と呼ばれる精鋭部隊だ。


 ディオレラ王は兵力を増強し、北のダナグランド王国を陥落させようと目論んでいるという噂があった。

 そのために不思議な力を持つ少女リサの力を手に入れようと国を挙げて捜索しているという噂があった。

 実際に少女の写真と特徴を書いたビラが配られ賞金も懸けられていた。

 そういう状況であるにもかかわらず誰もが分かっていないことがあった。

 それは彼女に不思議な力があるという噂があるものの、一体どのような力を持っているのか誰も知らなかった。

 噂が噂を呼び、一国を滅ぼすほどの破壊力があるとか、すべての国民の心を狂わせる力があるとか……その力に関する噂も様々だった。

 

 そして、彼女の噂は、近隣の各国に広がり、今や様々な国が彼女を探している状況だった。


 そんな中で、このディオレラ王国の軍を率いる将軍ダバンが今朝方けさがたリサ本人らしき少女を捕らえたのだ。

 ダバンは外の城壁を警備する守衛ゴーラに奴隷の少女を連れてきたとだけ伝え、ディオレラの街に入った。

街はディオレラに住む住人だけでなく、近隣の町から行商に来る商人たちも多く活気に溢れていた。


 将軍ダバンと行動をともにする副将軍ギレイルがダバンの横につく。

「ダバン様、これからどうされるんですか? すぐに、こいつを城に突き出すんですか?」


 ダバンがリサの方をチラッと見て囁くようにギレイルに言う。

「どう思う。噂では一国を滅ぼすほどの不思議な力を持っていると聞く。信じられんが、もし本当なら、こいつを手に入れた今、俺たちが国を支配することもできるのではないか?」


「そうですよ。ダバン様。今、あなたがその力を手に入れている。あなたがその気なら、私はあなたについて行きますよ」


「ハハハ、しかし、こんな小さな子どもが、一体どんな力を持っているというのだ。にわかには信じられん。そんなことを信じて、へたをすれば、町中の笑いものになるか、しくじれば命を落とすことにもなりかねん」


「そうですよ」


「なにかよい策はないか」


「兵士のバンドラにやらせましょうか?」


「どうするのだ?」


「バンドラに、この子を使ってディオレラ城に攻め入る特攻隊長を命じるのです。本当にいけそうなら我々が援護する形で一気に城を攻め落とす。コイツの力が飛んだデマなら、我々がバンドラを仕留め王に突き出すというのは?」


「フ、それはいい考えだ」


 バンドラは気が短く荒っぽい性格で、ダバンやギレイルも手を焼いていた。ギレイルがダバンにささやく。

「明朝、バンドラにやらせましょう」

「そうしよう」


 二人はバンドラを呼び出し、ディオレラ城に攻め入る計画を話した。成功した暁にはダバンがこの国の王となり、ギレイルが宰相さいしょうとなる。そして、軍はバンドラに任せ将軍に任命するという話をした。

 バンドラは喜んでその話を引き受けた。


 その夜、ディオレラ城を陥落させるべくダバンたちは城の近くに宿をとり、朝が来るのを待った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る