第七話 ドジな魔法使い
どれほど歩いただろうか。
森はますます深く、空は木々に覆われてほとんど見えない。
湿った空気と重い沈黙が、心まで押しつぶしていく。
「……優希……」
無意識に名前を呟いたそのときだった。
——ドカンッ!
突然、すぐ近くで爆発音が響いた。
土煙が上がり、鳥が一斉に飛び立つ。
「な、なんだ!?」
弓を構え駆け寄ると、そこには奇妙な光景があった。
焦げ跡の中心に、若い女性がぺたりと座り込んでいる。
短いローブに、大きすぎる杖を抱え、髪には葉っぱがいくつも絡まっていた。
「あちゃ〜……また失敗しちゃった……」
呑気な声が、森の静けさに溶け込む。
翔太は思わず固まった。
「……えっと、大丈夫か?」
女性は顔を上げ、ぱっと笑った。
「わ、わっ! びっくりした! 人がいたんだ! よかったぁ〜、魔物じゃなくて!」
杖を取り落としそうになり、慌てて拾い上げる。
その仕草は頼りないが、ローブに刻まれた模様や杖の装飾は、確かに魔法使いのものだった。
「私はミナ。魔法の修行中なの! ……でも、さっきの爆発は練習だから、気にしないでね!」
胸を張って言うが、頭にはまだ葉っぱが残っている。
翔太は呆れ半分、安堵半分で息をついた。
「……練習であんな音を出すなよ」
「え、だめ? でも強い魔法を覚えないと、黒の魔物に勝てないし……」
その言葉に、翔太は目を細める。
この森で 「黒の魔物」を知っている。
それだけで、ただのドジでは終わらない気配があった。
「……っていうか、それーーー私の知ってる人の弓と同じ」
俺の弓を見て、ミナが不思議そうにしている。
「これは、さっき会ったリィナっていう人に貰ったんだ」
「えっ……リィナに会ったの?」
「……ああ……君の知り合いだったのか」
翔太は少し驚きながら言った。
「でも、リィナには村に来ないでくれって言われて」
翔太は今までの経緯をミナに伝えた。
「へ~……じゃあさ。 私が連れて行ってあげるよ。その村に」
「え……いいの? でもリィナには、連れていけないって、言われたんだけど……」
「大丈夫――― でぇ……その代わりにさぁ」
「村に着いたら、おいしいものご馳走してよ!」
ミナは明るく条件を言い渡してきた。
「いいけど…って俺、お金とか持ってないけど……」
「うん? お金?」
「あぁ……お金って言わないのぉ……かな? 物を買う時に使うもの」
「硬貨のことね……って、 えぇーーーっ!」
ミナは驚きながらも、察してくれた。
「え~っと……何も持ってないし、寝る場所もない!」
「呆れた。 でも、まぁ……わかった」
「私が宿屋を紹介してあげる」
「そこの宿屋は、つけがきくから。あと、硬貨の稼ぎ方も教えてあげるよ」
「本当に!」
「ありがとう。助かるよ」
「でも、忘れないでね。美味しいものをご馳走してくれる約束!」
不思議な出会いは、ここから始まろうとしていた。
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