第2話 勘違いの嵐と魔物退治装置
王女エレナを撃退してから一週間。
俺のスローライフは順調そのものだ。
ログハウスを拡張して、地下室を作った。いずれはDIYで無限のダンジョンでも作るかな。エンドコンテンツだ。
昔から言うだろ。
一日を楽しみたければ本を読みなさい。
一年を楽しみたければ種を蒔きなさい。
一生を楽しみたければダンジョンを掘りなさい。みたいな。
よーし俺全部やっちゃうぞー。
して、まずは第1地下室にワインセラーを完備。
もちろん、ワインは自作。森のヤマブドウを採ってきて発酵させたやつ。異世界はいいね、酒税法にひっかからないし。
とはいえ、俺自身はそんなに酒をたしなむ方じゃない。でも肉焼いて酒は山賊みたいであこがれる。昔は肉焼いて酒飲むだけみたいなショート動画をよく見たものだ。
次の日は家庭菜園を作った。整地から天地返し、畝たてまでできる手動耕うん機を作り、健康な汗を流す。
いやー、異世界でじゃがいもを植える喜び。たまらんね。サツマイモも植えるか。種いもはDIYで品種改良済み。
それから大豆とヘアリーベッチも植える。豆類の窒素固定能力はバカにならない。
土はいい。実にいい。無心になれる。
さらに次の日。
朝から温泉掘りに挑戦だ。
スキルで地中をスキャンして、熱源を探り、掘削開始。
遠くに火山が見えるからきっとお湯もでるはずと踏んだ。
ビンゴ。
一日で温泉がポコポコわいた。湯船は石を削って滑らかに、温度調整機能付き。露天風呂完成。
温泉の横にはビニールみたいに透明な木の皮を使ったビニールハウスを建てた。いったい何のためかって?
それは後のお楽しみ。
「ふぅ……極楽極楽」
本日のDIYも無事終了。湯に浸かりながら、星空を眺める。みなさまいつもご安全に。
そろそろふかふかタオルを織る織機なんかを作ってもいいかもしれないな、などと思いながら眼を閉じる。
温泉の横で、薪割りマシンがくるくる回転しながら四つ割りの薪を大量生産している。パカーン。パカーン。まるでししおどしみたいな音が夜風になびく。遠くからは狼魔物のろうろうたる遠吠え。
ああ、白雲生処有湯屋(白雲の生ずる処に温泉宿あり)
——※杜甫『絶句』よりパクリ。
風情があるなあ……。
これが俺の城。
一国一戸建ての主の特権。
だが。
そんな平和はまたしてもあっという間についえてしまう。
翌朝、森の入り口から甲高い声が響いた。
「匠くーん! 匠ー!? ここにいるって聞いたわよー!」
俺は手にした釘打ちインパクトを置いて、ため息をついた。
またやってきてしまった。
招かれざる客、第2弾。
やってきたのは、赤毛のポニテ娘。
年齢は十八くらい。
いろんな意味で元気すぎるあまりぱんぱんに破裂しそうなギルドの制服を着て、明るい笑顔。子犬みたいなせわしない系。
あれは……。
ギルド脱退のときにあれこれ余計な世話を焼いてくれた元気娘。王都ギルドの受付嬢、リリアだ。
けど。
「やっぱりいた!」
リリアは手を振って駆け寄ってきた。
後ろには冒険者らしきアマゾネスな女二人。
剣士と魔法使いだ。
もちろん知らない顔だ。
「えっと、何の用?」
俺は警戒しつつ聞いた。リリアはともかく、後ろの二人の敵意がハンパない。
リリアは胸を張って宣告。
「この森の魔物増加、匠が原因だって聞いたわ! ギルドの調査で、あなたが森を荒らして魔物を呼び寄せてるって!」
「は?」
俺は目を丸くした。
魔物増加?
どこ?
確かに最近、狼の遠吠えが聞こえるようになったけど、それは俺の罠と畑のおかげで周辺の生態系が安定したからではないのか?
「勘違いだ。俺はただ住んでるだけ」
「そんなわけないわ! 王女殿下から報告があったの。『魔物の配下になった男が、森を勝手に改造してる』って!」
「あ」
俺はちょっぴり視線を空に泳がせた。身に覚えがアリアリとアリアリよりのアリだ。
ちっ。エレナの奴、根に持ってやがったか。
リリアは目を輝かせて続ける。
「だから、ギルド命令で退去してもらうわ! 拒否したら、この冒険者さんたちが力ずくで……ね?」
剣士が剣を抜き、魔法使いが杖を構える。
「ギルドの公式クエストだ。従え」
「抵抗したら、朝敵魔物扱いだぞ」
じりじりと迫ってくる。
俺はやれやれとため息。
またかよ。天を仰ぐ。
また、あのセリフを口にすることになろうとは。
最強スローライフを邪魔する者はたとえ美少女でも容赦はしない 上原 友里@男装メガネっ子元帥 @yuriworld
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